2010.10.26
[イベントレポート]
WORLD CINEMA『ハンズ・アップ!』10/26(火)Q&A
10/26(火)、WORLD CINEMA『ハンズ・アップ!』ロマン・グーピル監督が登壇、上映後にQ&Aが行われました。
ロマン・グーピル監督(以下:監督):(日本語で)コンニチハ。アリガトウ。
――本当に素晴らしい作品を東京に持ってきてくださってありがとうございます。今、ご挨拶いただいてしまった感じですが、一言みなさんにご挨拶お願いできますか。
監督:この作品に関しては、これまでもカナダのモントリオール、もちろん、フランスのパリでも上映してきまして、観客のみなさんとディスカッションなども行ってきたのですが、そこで非常に驚いたのはここ東京でも、パリ、モントリオールでも観客のみなさんが同じような質問を私に対して投げかけてくれて、そこでさまざまなディスカッションが展開される。この映画を観て、似たようなことを感じてくださっているということに非常に驚いています。
――すぐに、ご質問を承りたいと思います。(早速手が挙がって)早かったですね。
監督:普通ですと、もっと自分がしゃべらないと最初の質問というものが出てこないんですが、今日はかなり例外的でいいと思います。
Q:それでは早速質問させていただきたいですが、この作品のひとつのテーマとして移民というものがあるわけですけれども、昨今のフランスは右派が政権を握っていて、イスラムのブルカ(イスラム教徒の女性が肌を他人に見せないようにする布)が禁止されたりですとか、あるいは(少数民族の)ロマの人々を強制送還したりといったようなことが起きているわけですが、その中でこの作品をフランス国内で上映してどんな反応があったかということをお伺いしたいです。
監督:サルコジ政権というのは、確かに右派政権で、激しい移民排斥などを展開しているわけですが、ひとつまず言えることは、この政権につく際、選挙の際、この移民問題であるとか、外国人排斥に関して、うそをついたわけではないと。むしろ彼はそのような政策をやるということ、それを公約としてかかげて、そして選ばれた政権であるわけですね。それで、うそをついたわけではなく、こういうことをやりますと宣言して政権についたサルコジなのですが、そのサルコジが8月(2010年)に行ったスピーチでは、ロマの人たちに対して、個々のロマの人ではなく、ロマ全体を指して、彼らはけしからない、不良のような人たち、非行を働いているような人たちだと言ってるんですね。そんな言い方というのは考えられないことだと私は思います。それは、たとえば、日本人全員を指して、日本人というのは誰もがいじわるだとか、そんなことがあてはまらなのと同じことで、ロマ全体を指してそのまるごとひとつのコミュニティに対してそのようなことを言うのは考えられないことです。そのようなサルコジ政権の態度に対しては、ローマ法王やEU(ヨーロッパ共同体)、多くのフランス市民がそのようなサルコジの姿勢に対して反対を表明しているわけです。ただですね、サルコジは、さらにそのグルノーブルで行ったスピーチでは、加えて、もともと外国人で、フランス人として10年間すごしてきた人が、なんらかの問題行動を起こした場合には、国籍を剥奪するというようなことも言っておりますが、それもやはりどう考えてもおかしいものです。国籍というのは半分だけフランス人であるときから急にフランス人ではなくなるというものではないと思うのですね。ですからこういう恐ろしいひどい状況の中で私は作品を作ったということになります。
この作品はフランス国内で6月(2010年)に上映されており、好感を抱いていただいたプレスのもありまして、特にフランスは人権の国として自ら押し出しているようなところがありますから、そういうところを大事にする人たちから支持を得ました。ただ多くの人は、まずこの作品がどういうものか、不法滞在移民の話だ、この作品がそういうものを扱っている作品と知った時点で、この映画を見に行くのをやめようと思ってしまった人もかなりいました。ですから、実際には、批評の面では好印象、好感度は高かったようですが、市民の反応は半々、支持してくださった方と見に来ることさえしなかったという人の半々でした。この作品が、社会的に自らの立場を押し出している作品というよりも、純粋に政治的な作品というふうに捉えられてしまった感があり、市民の反応は半々というものでした。
いまから言うことは冗談としてお聞きいただけたらと思いますが、もしみなさんがこの作品を気に入ったと言ってくださるなら、私はぜひ日本に政治亡命、政治難民として亡命したいくらいです。女性の方も非常にきれいな方が多いですし、ぜひそうしたいくらいです。
――この作品、気に入られたでしょうか。(会場から大拍手)ありがとうございます。
Q:チェチェン人の女の子の母親が印象的ですごい俳優さんだなと思ったんですが、職業的な俳優じゃない一般人の方を使う監督さんもいらっしゃるかと思いますが、彼女はどうだったのでしょうか。
監督:実際私も映画を作る際、素人の方を使うことが多いです。今回のマリカさんとリンダさん、マリカさんというのは母親を演じた方で、リンダさんはミラナを演じた二人ですが、この二人については、ストーリーが決まった時点でキャスティングしました。このミラナを演じる少女をキャスティングしている際に、彼女と一緒にある女性がそばについていたんですね、その女性はあまりフランス語もうまくなく、ですけれども、その少女の横にいる女性をキャメラのレンズを通してみたときにびっくりするくらいすばらしい彼女の存在に何か驚くような、感じるものがあったんです。彼女は非常にやさしい感じもあり、もちろんとてもきれいな方で、そして何か非常に感動を与えるような存在で、特に彼女の目を見たときに、彼女の目の中に、ボスニアであるとかもちろんチェチェンで起こったさまざまなひどいこと、さまざまなドラマすべてが目の中に映しだされていると感じました。ですから、そのお母さんを演じた女性は素人ですが、すばらしい女優さんだと思いましたし、奇跡的な存在の方だと思いました。特にすばらしいのは、彼女はその辺に座っているときはそうでもないのですが、キャメラのレンズを通したときに光輝くような存在感が出ました。それは例えば、フランスでも有名なイザベル・アジャーニさんという女優さんがいますが、彼女もそんな感じです。実際、その辺にいるときはそれほどでもないのですが、キャメラのレンズを通して見たときに、まさにそこに光がありオーラがあるのんです。そういう存在の女優さんですが、母親を演じた、マリカさんもまさにそのような女性でした。
Q:ありがとうございました。主演の子どもたちの母親を演じた、バレリア・ブルーニ・テデスキさんは先ほどお話に出た、移民排斥の政策を行っているサルコジ首相の再婚相手のカーラ・ブルーニさんのお姉さん、ですよね。そういう彼女をキャスティングするということはものすごく果敢な挑戦というか、どのような意図でバレリア・ブルーニ・テデスキさんをキャスティングされたのか、またそれに対して彼女がどのように答えられたのかお聞きしたいです。
監督:まず、バレリアと私は10年来の友人として付き合いのある人です。もちろん、女優さんとしても大好きな人で、お互いいつか一緒にフィルムを作りたいねと話していました。ただ、なかなか二人の時間が合いませんでした。ようやく、一緒に作品に取り掛かろうとなって準備をすすめていましたら、ある日バレリアが私に向かって、ちょっと秘密の話があるんだけどというふうに言って来ました。その内容は何かと言うと、実は私の妹が今、恋をしている、と言うんですね。誰だと思う?ってバレリアから聞かれました。私はいろいろ想像して、「ローマ法王かな?」「違う」、「ブッシュ?」「違う」、「プーチンだろう」「それも違う」、というやりとりを10分ぐらい続けたところで最後に私が「サルコジ?」と聞いたら、「そうだ」と言いました!撮影の最初から分かっていたわけではなく、一緒にこの作品に取り掛かった途中でそういうことが明らかになったんです。ただそれによってすべて気持ち的にもがらっといろんなことが変わってしまいました。ただ作品に関していえば、私がこの事実を知ったことで、変えた点というのは、一つしかありません。それは、この作品の最初のフレーズですね。(作品の設定の)2067年で回想するシーンですけれども、そこで2009年の大統領が誰だったか名前も思い出せないというあのフレーズです。あれはこの事実を知った後で、付け加えました。そういうわけで、彼女を女優さんとして起用しようと思った時点ではこのことは知らなかったです。ただまぁ、彼女がこの作品に参加したことによって、今一家がお茶でも飲んでるときにもしかしたら何か問題が起こっているかもしれませんが。
Q:子どもの演技が素晴らしかったです、どのように演出を行いましたか?
監督:まず子どものキャスティングに関しては、従来普通に見られるようなキャスティング方法でして、私とバレリアがお父さん、お母さん役ということで、子どもたちを中心として探して行くわけですね。それに年齢的に見合う子どもを集めキャスティングを行いましたし、それから、ヒロインのリンダも、ほんとに奇跡的にあのような素晴らしい子どもにめぐり会えたわけですが、その彼女にめぐり会うまでにも何か月も費やしました。それで、ある程度子どもが集まったところで、今度はどの子どもにどういう役柄を当てようかということになって、この子はちょっとひょうきんなところがあるからそういう役にしようとか、この子はちょっと感じがいいからそういう役、というふうに、あるいは、ちょっといたずらっ子っぽいなというムードを出している子がいれば、そういうふうに、役を当てて行ったわけですね。それで最終的には子どもたちのグループはまるで幼少の幼稚園のころから常に一緒にいたようなグループになるようにしましたし、実際にそのような関係になったと思います。ただ、子どもたちと一緒に仕事をするというのはやはり大変なところがありました。というものやはり子どもというのは2回同じことを繰り返させると飽きてしまいます。ですから彼らの集中力をどうやって保たせるかというのは、非常に大変でしたし、そういう彼らの一回きりのいい瞬間というのをうまくとらえるというのは苦労した点ではあります。監督として、そういう忍耐力であるとかじっくり待つということは必要なことだと思いますし、子どもと仕事をする際には特にそういうものが必要になると思います。子どもたちを撮っている間、数週間というかなり長い時間撮るわけですから、その間子どもたちがずっと常に新しいものをどんどん出してくれるようにするには難しいことでした。ただ、映画作りというのはそういうことが付き物ですし、それが映画ですし、私はそれをまるごと楽しみました。
子どもたちの演技指導について、もう少し詳しく秘密をお伝えします。それは、シナリオを3つの部分に分けていたことです。3分の1に関しては、子どもたちにシナリオを丸暗記させるんですね。書かれてあるとおりにやりなさいと暗記させます。そして、2番目の3分の1に関しては、このシーンはこういう意図でやります。例えばここはけんかしているところだとか、ここは相談しているところだとか、そういう風にそのシーンの意図だけそこに示してあって、その意図に基づいて子どもたちにある程度自由にやらせる、と。残りのもう一つの3分の1に関しては、ほんとに子どもたちの自由に即興的にやらせるという風にしました。そのようにして、こちらとしてもかなり頭を使って子どもたちにうまく、その子どもたちの想像的な力であるとか、子どもは簡単に暗記とかできますので、そのへんもうまく利用しつつ、その三つのやりかたをうまくまぜながら演技指導をしてきました。
最後になりますが、今回TIFFに招待していただいて大変うれしく思います。もちろん、まだみなさんとたくさんお話したいですが、皆さんもほかの映画もご覧になられてディスカッションをされたらと思います。
ロマン・グーピル監督 インタビューは
コチラから
『ハンズ・アップ!』
→作品詳細
©2010 TIFF
ロマン・グーピル監督(以下:監督):(日本語で)コンニチハ。アリガトウ。
――本当に素晴らしい作品を東京に持ってきてくださってありがとうございます。今、ご挨拶いただいてしまった感じですが、一言みなさんにご挨拶お願いできますか。
監督:この作品に関しては、これまでもカナダのモントリオール、もちろん、フランスのパリでも上映してきまして、観客のみなさんとディスカッションなども行ってきたのですが、そこで非常に驚いたのはここ東京でも、パリ、モントリオールでも観客のみなさんが同じような質問を私に対して投げかけてくれて、そこでさまざまなディスカッションが展開される。この映画を観て、似たようなことを感じてくださっているということに非常に驚いています。
――すぐに、ご質問を承りたいと思います。(早速手が挙がって)早かったですね。
監督:普通ですと、もっと自分がしゃべらないと最初の質問というものが出てこないんですが、今日はかなり例外的でいいと思います。
Q:それでは早速質問させていただきたいですが、この作品のひとつのテーマとして移民というものがあるわけですけれども、昨今のフランスは右派が政権を握っていて、イスラムのブルカ(イスラム教徒の女性が肌を他人に見せないようにする布)が禁止されたりですとか、あるいは(少数民族の)ロマの人々を強制送還したりといったようなことが起きているわけですが、その中でこの作品をフランス国内で上映してどんな反応があったかということをお伺いしたいです。
監督:サルコジ政権というのは、確かに右派政権で、激しい移民排斥などを展開しているわけですが、ひとつまず言えることは、この政権につく際、選挙の際、この移民問題であるとか、外国人排斥に関して、うそをついたわけではないと。むしろ彼はそのような政策をやるということ、それを公約としてかかげて、そして選ばれた政権であるわけですね。それで、うそをついたわけではなく、こういうことをやりますと宣言して政権についたサルコジなのですが、そのサルコジが8月(2010年)に行ったスピーチでは、ロマの人たちに対して、個々のロマの人ではなく、ロマ全体を指して、彼らはけしからない、不良のような人たち、非行を働いているような人たちだと言ってるんですね。そんな言い方というのは考えられないことだと私は思います。それは、たとえば、日本人全員を指して、日本人というのは誰もがいじわるだとか、そんなことがあてはまらなのと同じことで、ロマ全体を指してそのまるごとひとつのコミュニティに対してそのようなことを言うのは考えられないことです。そのようなサルコジ政権の態度に対しては、ローマ法王やEU(ヨーロッパ共同体)、多くのフランス市民がそのようなサルコジの姿勢に対して反対を表明しているわけです。ただですね、サルコジは、さらにそのグルノーブルで行ったスピーチでは、加えて、もともと外国人で、フランス人として10年間すごしてきた人が、なんらかの問題行動を起こした場合には、国籍を剥奪するというようなことも言っておりますが、それもやはりどう考えてもおかしいものです。国籍というのは半分だけフランス人であるときから急にフランス人ではなくなるというものではないと思うのですね。ですからこういう恐ろしいひどい状況の中で私は作品を作ったということになります。
この作品はフランス国内で6月(2010年)に上映されており、好感を抱いていただいたプレスのもありまして、特にフランスは人権の国として自ら押し出しているようなところがありますから、そういうところを大事にする人たちから支持を得ました。ただ多くの人は、まずこの作品がどういうものか、不法滞在移民の話だ、この作品がそういうものを扱っている作品と知った時点で、この映画を見に行くのをやめようと思ってしまった人もかなりいました。ですから、実際には、批評の面では好印象、好感度は高かったようですが、市民の反応は半々、支持してくださった方と見に来ることさえしなかったという人の半々でした。この作品が、社会的に自らの立場を押し出している作品というよりも、純粋に政治的な作品というふうに捉えられてしまった感があり、市民の反応は半々というものでした。
いまから言うことは冗談としてお聞きいただけたらと思いますが、もしみなさんがこの作品を気に入ったと言ってくださるなら、私はぜひ日本に政治亡命、政治難民として亡命したいくらいです。女性の方も非常にきれいな方が多いですし、ぜひそうしたいくらいです。
©2010 TIFF
――この作品、気に入られたでしょうか。(会場から大拍手)ありがとうございます。
Q:チェチェン人の女の子の母親が印象的ですごい俳優さんだなと思ったんですが、職業的な俳優じゃない一般人の方を使う監督さんもいらっしゃるかと思いますが、彼女はどうだったのでしょうか。
監督:実際私も映画を作る際、素人の方を使うことが多いです。今回のマリカさんとリンダさん、マリカさんというのは母親を演じた方で、リンダさんはミラナを演じた二人ですが、この二人については、ストーリーが決まった時点でキャスティングしました。このミラナを演じる少女をキャスティングしている際に、彼女と一緒にある女性がそばについていたんですね、その女性はあまりフランス語もうまくなく、ですけれども、その少女の横にいる女性をキャメラのレンズを通してみたときにびっくりするくらいすばらしい彼女の存在に何か驚くような、感じるものがあったんです。彼女は非常にやさしい感じもあり、もちろんとてもきれいな方で、そして何か非常に感動を与えるような存在で、特に彼女の目を見たときに、彼女の目の中に、ボスニアであるとかもちろんチェチェンで起こったさまざまなひどいこと、さまざまなドラマすべてが目の中に映しだされていると感じました。ですから、そのお母さんを演じた女性は素人ですが、すばらしい女優さんだと思いましたし、奇跡的な存在の方だと思いました。特にすばらしいのは、彼女はその辺に座っているときはそうでもないのですが、キャメラのレンズを通したときに光輝くような存在感が出ました。それは例えば、フランスでも有名なイザベル・アジャーニさんという女優さんがいますが、彼女もそんな感じです。実際、その辺にいるときはそれほどでもないのですが、キャメラのレンズを通して見たときに、まさにそこに光がありオーラがあるのんです。そういう存在の女優さんですが、母親を演じた、マリカさんもまさにそのような女性でした。
Q:ありがとうございました。主演の子どもたちの母親を演じた、バレリア・ブルーニ・テデスキさんは先ほどお話に出た、移民排斥の政策を行っているサルコジ首相の再婚相手のカーラ・ブルーニさんのお姉さん、ですよね。そういう彼女をキャスティングするということはものすごく果敢な挑戦というか、どのような意図でバレリア・ブルーニ・テデスキさんをキャスティングされたのか、またそれに対して彼女がどのように答えられたのかお聞きしたいです。
監督:まず、バレリアと私は10年来の友人として付き合いのある人です。もちろん、女優さんとしても大好きな人で、お互いいつか一緒にフィルムを作りたいねと話していました。ただ、なかなか二人の時間が合いませんでした。ようやく、一緒に作品に取り掛かろうとなって準備をすすめていましたら、ある日バレリアが私に向かって、ちょっと秘密の話があるんだけどというふうに言って来ました。その内容は何かと言うと、実は私の妹が今、恋をしている、と言うんですね。誰だと思う?ってバレリアから聞かれました。私はいろいろ想像して、「ローマ法王かな?」「違う」、「ブッシュ?」「違う」、「プーチンだろう」「それも違う」、というやりとりを10分ぐらい続けたところで最後に私が「サルコジ?」と聞いたら、「そうだ」と言いました!撮影の最初から分かっていたわけではなく、一緒にこの作品に取り掛かった途中でそういうことが明らかになったんです。ただそれによってすべて気持ち的にもがらっといろんなことが変わってしまいました。ただ作品に関していえば、私がこの事実を知ったことで、変えた点というのは、一つしかありません。それは、この作品の最初のフレーズですね。(作品の設定の)2067年で回想するシーンですけれども、そこで2009年の大統領が誰だったか名前も思い出せないというあのフレーズです。あれはこの事実を知った後で、付け加えました。そういうわけで、彼女を女優さんとして起用しようと思った時点ではこのことは知らなかったです。ただまぁ、彼女がこの作品に参加したことによって、今一家がお茶でも飲んでるときにもしかしたら何か問題が起こっているかもしれませんが。
Q:子どもの演技が素晴らしかったです、どのように演出を行いましたか?
監督:まず子どものキャスティングに関しては、従来普通に見られるようなキャスティング方法でして、私とバレリアがお父さん、お母さん役ということで、子どもたちを中心として探して行くわけですね。それに年齢的に見合う子どもを集めキャスティングを行いましたし、それから、ヒロインのリンダも、ほんとに奇跡的にあのような素晴らしい子どもにめぐり会えたわけですが、その彼女にめぐり会うまでにも何か月も費やしました。それで、ある程度子どもが集まったところで、今度はどの子どもにどういう役柄を当てようかということになって、この子はちょっとひょうきんなところがあるからそういう役にしようとか、この子はちょっと感じがいいからそういう役、というふうに、あるいは、ちょっといたずらっ子っぽいなというムードを出している子がいれば、そういうふうに、役を当てて行ったわけですね。それで最終的には子どもたちのグループはまるで幼少の幼稚園のころから常に一緒にいたようなグループになるようにしましたし、実際にそのような関係になったと思います。ただ、子どもたちと一緒に仕事をするというのはやはり大変なところがありました。というものやはり子どもというのは2回同じことを繰り返させると飽きてしまいます。ですから彼らの集中力をどうやって保たせるかというのは、非常に大変でしたし、そういう彼らの一回きりのいい瞬間というのをうまくとらえるというのは苦労した点ではあります。監督として、そういう忍耐力であるとかじっくり待つということは必要なことだと思いますし、子どもと仕事をする際には特にそういうものが必要になると思います。子どもたちを撮っている間、数週間というかなり長い時間撮るわけですから、その間子どもたちがずっと常に新しいものをどんどん出してくれるようにするには難しいことでした。ただ、映画作りというのはそういうことが付き物ですし、それが映画ですし、私はそれをまるごと楽しみました。
子どもたちの演技指導について、もう少し詳しく秘密をお伝えします。それは、シナリオを3つの部分に分けていたことです。3分の1に関しては、子どもたちにシナリオを丸暗記させるんですね。書かれてあるとおりにやりなさいと暗記させます。そして、2番目の3分の1に関しては、このシーンはこういう意図でやります。例えばここはけんかしているところだとか、ここは相談しているところだとか、そういう風にそのシーンの意図だけそこに示してあって、その意図に基づいて子どもたちにある程度自由にやらせる、と。残りのもう一つの3分の1に関しては、ほんとに子どもたちの自由に即興的にやらせるという風にしました。そのようにして、こちらとしてもかなり頭を使って子どもたちにうまく、その子どもたちの想像的な力であるとか、子どもは簡単に暗記とかできますので、そのへんもうまく利用しつつ、その三つのやりかたをうまくまぜながら演技指導をしてきました。
最後になりますが、今回TIFFに招待していただいて大変うれしく思います。もちろん、まだみなさんとたくさんお話したいですが、皆さんもほかの映画もご覧になられてディスカッションをされたらと思います。
ロマン・グーピル監督 インタビューは
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『ハンズ・アップ!』
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