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2010.10.26
[インタビュー]
コンペティション『サラの鍵』 ジル・パケ=ブレネール監督 インタビュー (10/26)

ジル・パケ=ブレネール監督

第2次大戦中のフランスのユダヤ人の悲劇を描いた世界的ベストセラー小説『サラの鍵』に出会ったのは、パリ生まれ、パリ育ちのジル・パケ=ブレネール監督の運命の必然だった―。フランスは自らが歩んだ近い過去を見つめねばならないという空気の真っただ中でブレネール監督は、ドイツ占領下のパリのアパルトマンに住んだ少女サラの物語を今の世界に蘇らせる。過去と現在を交互に描く原作と同じ手法によって、サラの人生がリアルに迫ってくる。
©2010 TIFF
 
――ユダヤ人迫害の歴史を知ったのは? 

ホロコースト(民族大虐殺)のことは学校でももちろん教わったけれど、僕の祖父はドイツのユダヤ人で、強制収容所で亡くなった。だから僕は家族のこととして早くから知っていた。しかし、知るということと理解することの間には大きな差がある。原作を3年半前に読んで、そのことを痛感した。今の若い世代も歴史としては知っているけれど、深く理解しているとは言えない。なぜホロコーストは起きたのか。それは一体どのように行われたのか。そのことを一般観客にも深く考えてほしい。これは現代にも通じる問題だ。

――ドイツ占領下のフランスのユダヤ人については今までも映画で描かれてきましたが、それらとの違いは?

ナチスに協力した人々は確かにいたし、そのことは以前の映画にもでてきたけれど、フランス警察がユダヤ人を連行し、収容所に移送したということは、国家が迫害に加担したわけだから大変なことだ。それをジャック・シラクが大統領時代にスピーチで明らかにし、フランス国民は衝撃を受けた。

――サラを演じたメリュシーヌ・マイヤンスは戦争を理解していましたか?

最初は戦争のことを知らなかったので、彼女の両親が話してきかせた。またホロコーストを生きのびた人に私が会った時、彼女も一緒に会い、話を聞いている。まだ10歳なので表面的なことしかわかっていないだろうが、数年後により深く理解するかもしれない。

――アメリカ人ジャーナリスト、ジュリアを演じたクリスティン・スコット・トーマスは撮影中、どうでしたか?

信頼してもらえれば、大変よくやってくれる。彼女に何か演技の上で要求する時は、こちら側がきちんとそのわけを説明しなければならない。そして納得すれば素晴らしい演技を見せてくれる。
©2010 TIFF

――映画作りでこころがけたことは?

重いテーマだからあえて悲劇的にメロドラマチックにならないようにした。1942年の特殊な出来事のまさに現場にいるような感覚を目指した。つまり、歴史をはるか遠くのものにしないために。ホロコーストの犠牲を何百万という数字で示すのではなく、個々の誰かがこんなめにあったのだということを見せたかった。幸いサンセバスチャン映画祭で上映された時も、スペインがやはり過去を明らかにしようという気運が高まっていたので、よく理解してもらえた。サラの悲劇は決して過去のものではなく、今に影響している。映画のなかのジュリアはアメリカ人でユダヤ人ではないけれど、自分の家庭やあらゆるものを犠牲にして、サラを追いかける。女優のスコット・トーマスだってそう。そこにこの映画の普遍性がある。ところで過去と直面する点で日本はどうだろうか?


パリとロサンゼルスの両方に拠点を持ち、フラン人であると同時にコスモポリタンでもあるブレネール監督は、人間であることの普遍性こそが大事だと語る。そんなところは世界を旅して取材するヒロインに重なるが、ブレネール監督はパリに戻る時がいつも嬉しい。「大都会だけれど、静かな家庭生活もできる街」、それがパリの魅力だそうだ。

(聞き手:田中千世子)


『サラの鍵』
©Hugo Films



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