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2010.10.25
[インタビュー]
アジアの風『4枚目の似顔絵』チョン・モンホン(鍾孟宏)監督インタビュー(10/25)

チョン・モンホン(鍾孟宏)監督

少年の視点で描かれた、美しくて、怖くて、ちょっとおかしい、エモーショナルなヒューマンドラマ『4枚目の似顔絵』。
同作を監督した、台湾映画界期待の俊英=チョン・モンホン監督にお話をうかがった。
©2010 TIFF

――この10月22日から、『4枚目の似顔絵』のロードショーが台湾ではじまりました。

今回もたぶんヒットしないでしょうね。台湾の観客は、僕の映画が嫌いだから(苦笑)。本音をいえば、「撮りたい映画を撮って、かつ商業的な成功もおさめる」ことができればいいんですけど、なかなかうまくいかないですね。

――でも、望まないような映画しか撮れない監督が多い中、撮りたい映画を撮れるチョン監督はまだ幸せなんじゃないですか?

そうでもないですよ(笑)。映画がヒットしないと、次回作の資金が集まらないですし。もちろん自分がイメージしたような映画が撮れた時は、それはとても嬉しいことではあるんですけど。

――商業的な成功はさておくにしても、数々の映画賞に輝いたり、海外の映画祭に招待されたりと高い評価を得ています。

賞をいただけるのは嬉しいですし、海外の映画祭に参加することは作品のセールスのためには重要なことです。でも、自分は映画をつくることに全力を傾けるのが仕事であって、その後にできることは、じつはあまりないんですよね。ですから、そういった面に関しては、ちょっと冷静というか。

――海外の映画祭といえば、東京国際映画祭の直前に、釜山国際映画祭に行かれていますよね。

釜山と東京の観客は、まるで違いますよ。釜山の観客はものすごく熱狂的で、誰でも何かいいたくて仕方がない! という感じなんですけど、東京の観客はとても静かで。でもお話をきいてみると、とても細かいところまで作品を観てくださっているんですよね。どちらかといえば、私は東京の方が好きです。

――監督の長編劇映画デビュー作『停車』(08)は、色んな意味で衝撃的な作品でした。とくに、新人監督の芸術(風)映画に、なぜチャン・チェンやグイ・ルンメイといった大スターたちが出演したのか?というのが気になって仕方がなかったんです。

まず最初にちょっとだけ訂正させていただきたいのは、いまの台湾には“大スター”はいないんです。彼らは“有名俳優”というべき存在だと思います。そんな彼らが『停車』に出演してくれたのは、台湾映画を応援したいというか、新しいタイプの台湾映画がつくられることを期待してくれた、ということじゃないですかね。もしかすると、たんにヒマだっただけなのかもしれないですが(笑)。
©2010 TIFF

――上映終了後のQ&Aでも話されていましたけど、『停車』と『4枚目~』の撮影監督=中島長雄は、じつはチョン監督の別名なんですよね。『停車』の撮影はCM出身者ならではのスタイリッシュな映像が印象的でしたが、『4枚目~』では画が美しいのは同様ですが、「とんがった部分」は影を潜めた気がします。

『停車』を撮る時には、CMのクセをなるべく出さないようにしたんですが、全然ダメでしたね。『4枚目~』ではその反省をいかして、なるべくシンプルな画づくりを心がけたつもりなんですが、まだ完全にはできていない気がします。CMのクセを捨て去ることが、今後の課題です。

――捨て去るとは?

映画を撮る時には、CM時代の経験は邪魔だと思っているんです。台湾のCM出身の映画監督が、総じてあまり成功をおさめていないのがそれを証明しているんじゃないでしょうか。

――もうひとつ、『4枚目~』を語る上で欠かせないのが、『停車』の前に監督が撮られたドキュメンタリー映画『醫生(DOCTOR)』(06)です。『4枚目~』の劇中に出てくる「2枚目の絵」は、『醫生』に登場する(自殺してしまう)少年=Felixくんが描いたもので、この絵にインスパイアされて、『4枚目~』が完成したと監督は話されていますね。

――『醫生』はドキュメンタリーではありますけど、私の長編第1作ですから思い入れも大きいですし、Felixの絵が『4枚目~』の創作に大きな影響を与えたのはまぎれもない事実です。でも、僕はこの『4枚目~』で彼(Felix)に別れを告げようと思っているんです。彼との過去から“卒業”して、次回作は全く新しい方向に進もうと。

――それが、前2作にあったブラックユーモアの要素を廃したといわれる、来年撮影予定の新作ですね。

そうです。精神分裂症をテーマにした、とても怖いホラー映画になる予定です。この映画を持って、是非、2012年の東京国際映画祭に参加したいですね。

(聞き手:杉山亮一)


4枚目の似顔絵
→作品詳細



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