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2010.10.26
[イベントレポート]
10/26(火)コンペティション 『サラの鍵』 公式記者会見

ジル・パケ=ブレネール(監督/脚本)

10月26日(火) 14:00~ @TIFF movie café
登壇者 ジル・パケ=ブレネール(監督/脚本)
©2010 TIFF


「いくらでも質問に答えますよ!」とジル・パケ=ブレネール監督。まずは年齢を尋ねられ(1974年9月14日、36歳)、記者会見が始まりました。

Q: 肉親の方にホロコーストの犠牲者がいらっしゃるとのことでしたが―

ジル・パケ=ブレネール監督(以下、監督): 私の祖父がユダヤ系ドイツ人で、音楽家としてフランスの自由地帯に住んでいたのですが、フランス側に告発され、強制収容所で亡くなりました。ベルリンにいた曽祖父と大叔父も収容所で亡くなりました。映画には、祖父に捧げるシーンがあります。指輪に毒を入れている男性のシーンですが、これは実際にあったことで、映画制作の準備入ってから、兄が教えてくれました。悲痛な出来事であるとともに、人間というものを表していると感じました。全てを奪われた時、人間に残されているのは何時死ぬかという選択肢くらいなのだということです。

Q: 「過去を知らなければ未来はつくれない」とおっしゃっていましたが、その想いはどこからきたのですか?

監督: 若い世代の人たちは、あまり過去に興味を持ちません。しかし、旧世代の人たちは、過去について話したがります。若い人たちに過去と関連
性を感じてもらう方法、過去を知ることの重要性に気づいてもらえる方法はないかと考えました。そこで二つの時代を並行させることを思いつきました。いかに過去が現在に影響を与えているかと言うことを表現したかったんです。過去に直面しそれを理解しようとする時、より確かな将来を築くことができます。過去を忘れないことも重要です。世界大戦から、まだそれほど時が経っていません。しかし、現在の若者がそれについて一切興味を示さなかったら、30年後はどうなってしまうのでしょう。恐ろしいことが起きてしまうと思います。過去は、樹木を植えそれを育てるための大地のようなものです。

Q: 脚本はどれくらい原作に忠実に書かれたのでしょうか?原作はフランスでどのような評価を得たのでしょうか。

監督: かなり原作に忠実に作りました。原作にない部分をあげますと、原作では小さな男の子が自らクローゼットに入りますが、映画ではサラがそれを勧めていて、結果として彼女の罪悪感が強くなっています。また、原作ではサラの成長ぶりが描かれていません。映画では、ティーンエージャーのサラと大人になってからのサラが登場します。それからウィリアムと父親とのシーンは、原作にはありません。それ以外は、ほぼ忠実です。小説は、フランスでは成功しましたが、出版されるまでに苦労があったようです。当時タチアナ・ド・ロネはベストセラー作家ではなく、また、ユダヤ人ではないということからも真剣に取り合ってくれる出版社が見つからず、出版されたのは、書き終えてから3年も経ってからのことです。

Q: フランスの人たちにとって、警察の関与などもあって、目を背けたい過去が描かれていますが、映画はどのように受け止められましたか?

監督: 年代にもよると思います。年配の人たちの間では、非常に興味を持ってくれる人もいれば、拒絶する人もいました。そのような現実に直面したか、関わっていたからなのかもしれません。若い人たちはもっと客観的です。フランスの警察が関わっていたという事実を初めて知ってショックを受けている人もいます。ホロコーストは、ドイツのナチスによるものだと思っていたようですから、他国の、それもフランスに協力者がいたという事実に驚いたようです。ただ、自分達が生まれる前の出来事なので、自ら罪の意識を感じるということはないようです。そのことについて知りたくなかったと言う人もいれば、知って良かったと思ってくれる人もいます。年齢と歴史との関わり方によって様々です。

Q: 過去と現代を上手くつなげていると感じました。監督として、また、技術的に工夫した点などについて教えてください。

監督: 二つの時代をつなげることは、映画の流れを保つという点においては、容易ではありませんでした。脚本段階から工夫しました。二つの時代が共鳴し合うこと。ひとつの時代の最後のシーンと次のもうひとつの時代の最初のシーンのつなぎ方や映し方にも気を使いました。観客が二つの映画を見ているのではなく、ひとつの映画の中に二つの時代が並行して描かれているということを感じてもらえるように注意しました。原作はもっと長いものでしたが、基本的な話の筋書きに係わる部分、サラとジュリアの役どころに直接関連する部分は残すようにしました。

Q: 三つの世代が交錯していますが、時世をつなぐということで三つの世代を描いた監督としての意図を教えてください。

監督: 年齢や背景によって、過去や戦争について、過去だけではなく現在についての反応も異なります。「〈戦争を〉テレビで見たよ」というのはもちろん皮肉ですが、あまりにも多くの紛争や悲惨な出来事が現在進行形で起きていて、過去のことまで考えられない、あるいは今のことさえ気に懸けない人たちがいます。メッセージという言葉はあまり好きではないですが、そういうことに目を向ける重要性について伝えることを意図しました。過去に起きたサラの悲劇を見ることで、現在にも多くのサラが存在するということを考えてほしいです。




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