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2010.10.26
[インタビュー]
アジアの風 『タイガー・ファクトリー』ウー・ミンジン監督、エドモンド・ヨウさん(プロデューサー) インタビュー(10/26)

ウー・ミンジン監督、エドモンド・ヨウさん(プロデューサー) 

TIFF09で上映したホー・ユーハン監督の『心の魔』など、若い世代のマレーシア映画人は、身近にある悲惨な事件を直視し映像化している。『タイガー・ファクトリー』は気鋭のウー・ミンジン(監督)とエドモンド・ヨウ(プロデューサー)が、日本渡航を夢見、赤ん坊売買などの犯罪に嵌っていく少女を描く。伴映の『インハレーション』は、二人が役割を交代して撮ったスピンオフ短編。世界の映画祭などでも注目を集めている二人に、お話をうかがった。
©2010 TIFF

――内容に衝撃を受けました。二人の少女の、日本に行って違う未来を掴みたいという強すぎる願いに胸が痛くなりました。マレーシアで実際にあった事件を元にしたということですが。

ウー・ミンジン監督(以下 ミンジン): 赤ん坊を売買していた人が捕まったというニュースを新聞で読み、着想を得ました。あと、友達から、日本で車のパーツを解体して海外に出す際の、船の行き来に乗じて密入国する人がいるという話を聞きました。
©2010 TIFF

――実際のところ、傾向としてあるものなんでしょうか。

ミンジン: 彼女たちのような人がそんなにたくさんいるというわけではないと思います。やはり地方出身の学のない人が、情報がない中で、日本に行って数年働けばこれだけお金が作れるよということで、丸めこまれてしまうというのがあります。イギリスも人気がありますが、アジアの中では日本は非常に人気がありますね。換金した時の円の価値も影響しています。

エドモンド・ヨウさん(以下 ヨウ): アジアの中では日本のイメージはすごくいいんです。映画やテレビドラマを通じて「バラ色の日本」を信じてしまい、「行けばなんとかなる」と思ってしまうところがあると思います。
©2010 TIFF

――どんなものが見られているんでしょう?

ヨウ: 90年代初頭からの日本ブームで、アニメはほとんどのものが中国語やマレー語に吹き替えされています。ドラえもんやドラゴンボール、あとはキムタクのテレビドラマ…。映画はあまり見れないのですが、アニメとテレビドラマに関しては、毎週何かしら日本のものをやっています。

――この作品は早稲田大学大学院国際情報研究科・安藤紘平研究室が共同製作しています。ヨウ監督は、現在も研究室に在籍中とのことです。

ヨウ: 私はもう2年半くらい安藤ラボにいます。前回撮った短編『金魚』(ベネチア映画祭で上映)も安藤ラボの共同制作だったので、今回も安藤先生のお知恵を借りたいということで企画を持ち込みました。

――少女の状況や気持ちを説明的に描写するというよりは、観客を少女の立場に投げ込み、実際に体験させるような映画だと思いました。手持ちカメラの揺れが臨場感を出すと同時に少女の不安を象徴しているようでもあります。

ミンジン: まさに臨場感を大事にしました。役作りは俳優にまかせ、即興的な撮影を行い、俳優に自分自身を投影してもらいました。私たちが映画を観て初めて経験することは、彼女たちも初めて経験することだ、くらいの勢いで。

――二人の少女はプロの俳優さん?

ミンジン:『タイガー・ファクトリー』の女優はプロですが、まだ脇役しかやったことのない、演技慣れしていない生々しさを持った子です。直感的に、自分を出すように演じてもらいました。

ヨウ:『インハレーション』の女優はどこかで演技の勉強をしたことはあるようですが、アマチュアです。『タイガー・ファクトリー』に出ているのを見て、「面白い顔をしているな」と思い、彼女を主役にして撮ってみました。リアルな感じを出せる女優だと思います。

ミンジン:『タイガー・ファクトリー』の意地悪なおばさんはツァイ・ミンリャンの『黒い眼のオペラ』に出ている人ですよ。
©2010 TIFF

――次回作の予定を教えてください。

ヨウ:『インハレーション』と一緒に編集したものなのですが、今度は『エクスハレーション』という日本で撮った短編があります。篠原ともえと杉野希妃の二人を主人公にした死と喪失についての話で、12月のドバイ国際映画祭で上映されます。

ミンジン: マレーシアでスプラッターホラーの商業作品を一本手がけているのと、あと今回TPG(※1)に出品している『古本屋の純』という企画があります。

※1:Tokyo Project Gathering. TIFF併設のコンテンツマーケットTIFFCOMの三本柱の一つ。映画・アニメ等の映像コンテンツの国際共同制作、海外からの資金調達の促進を目的に、企画開発段階から完成前の作品を対象とする企画のプレゼンテーションの場を設け、国内外の映像制作者の交流・商談の場を提供している。


(聞き手:夏目深雪)


タイガー・ファクトリー+インハレーション(短編)
→作品詳細


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