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2010.10.23
[イベントレポート]
10/23(土)『ギャランツ~シニアドラゴン龍虎激闘』 デレク・クォック(郭子健)監督&クレメント・チェン(鄭思傑)監督:Q&A

『ギャランツ~シニアドラゴン龍虎激闘』 デレク・クォック(郭子健)監督&クレメント・チェン(鄭思傑)監督

ブルース・リャン! そしてチャン(チェン)・カンタイ!! 伝説の2大武打星が、現代香港に奇跡の復活!!! 熱い血潮のたぎる傑作『ギャランツ~シニアドラゴン龍虎激闘』を携えて東京国際映画祭初登場の、デレク・クォック&クレメント・チェン両監督のQ&Aが、満席のお客様の前で行われました。
©2010 TIFF

まずは、両監督からのごあいさつ。

デレク・クォック監督:日本に戻ってこれてうれしいです。1本目の映画『野。良犬』をもって、はじめて日本に来ました。今回の『ギャランツ~』は私の3本目の作品で、日本に来るのはこれで3回目となります。映画を通して皆様と交流できるのは私の喜びですし、とくに日本の皆様は私の映画を好んでいただけているのが反応をみればわかりますので、それがまたとてもうれしいです。今回の作品も楽しんでいただければ幸いです。

クレメント・チェン監督:本日はご来場ありがとうございます。じつは私の従兄弟が日本に住んでいまして、10数年会っていなかったんですが、今日、会場に来てくれました(会場に向かって手をふるチェン監督)。私とデレクは、10数年前、映画の勉強をしていた頃から東京国際映画祭に参加することを夢見ていました。いま、その夢が叶ってとても幸福な気分です。

Q1(司会者より):香港には元気なおじいちゃんがいるなぁと感心しました(笑)。ブルース・リャンさんをはじめとする、大先輩の俳優を若いおふたりが演出するというのはどんな気分ですか?

クォック監督:師匠役のテディ・ロビンさんは、私とクレメントにとっても「映画の師匠」にあたる人物ですので、『ギャランツ~』に出ていただくことにはとくに問題はなかったです。ソン役のブルース・リャンさんとは、脚本執筆中から内容について色々と話し合って、アドバイスを頂戴していました。セン役のチャン・カンタイさんは、プロデューサーとクレメントが北京まで行って出演交渉をさせていただきました。彼らはベテランですから、私たちがとくに演技指導をする必要はありませんでしたし、どちらかというと「一緒に遊ぼうよ!」という感じで、私たちに歩みよってきてくれました。いや、むしろ、彼らは大分年齢が上ですが、まるで子供のように、私たちよりも全力で楽しんでいたという感じです。

チェン監督:ブルース・リャンさんとチャン・カンタイさん、このおふたりを演出するにあたって、最初は正直ちょっと怖いな・・・と思う部分もあったんです。彼らはかつてのスーパーヒーローですし、年齢こそ60歳を超えていますが功夫の技はいまでも超一流です。僕とデレクは身体はそこそこ大きいですけど、もちろん功夫もできませんし、撮影の時に何か変なことをしてしまってぶっとばされたらどうしよう、と。もちろん、それはたんなる杞憂にすぎなかったんですが。また、おふたりはテディ・ロビンさんをとても尊敬されていました。テディさんは60年代を代表する香港ロック界のスーパーアイドルで、おふたりともファンだったようです。この3人の関係はとてもよくて、現場でもノリノリで色んなアイディアを出してくださいました。劇中、浜辺で彼らが立ちションをするシーンがありましたよね? あのシーンも、別に僕らがああいう演出をしたワケではなくて、彼らが「ここは立ちションだ!」と(笑)。

Q2(司会者より):テディ・ロビンさんは、もう映画に出ないときいていたんですが・・・

クォック監督:テディさんは確かに、もう10数年間映画には出演していませんでした。ただし、それは役者をやめたということではなくて、いい役、いい脚本にめぐりあえなかったから出ていなかっただけなのです。彼は、私のデビュー作『野良。犬』をプロデュースしてくれましたが、その時も役者としての出演はNGでした。今回の『ギャランツ~』は、脚本執筆中から「主役ではないけれど重要で、女の子と一緒に撮影するシーンも多く、めちゃめちゃ功夫が強い役なんだけれどもアクションシーンはほとんどない、そいうおいしい役があるんですが・・・」と話をふり続けてまして、脚本完成後に彼にみせたところ「これはほとんど主役じゃないか!よし、出る!!」といっていただけました(笑)。

Q3:『ギャランツ~』を撮ることになったきっかけは?

クォック監督:テディさんの会社で働いていた頃から、クレメントと一緒に温めていた企画がありました。それは「老人のミュージシャンたちを主役にすえた」作品だったんですが、香港映画界には音楽ものはヒットしないというジンクスのようなものがありまして、長い間、お蔵入りとなっていたんです。それからしばらくたって、『ギャランツ~』のプロデューサーであるラム・カートン(林家棟)とアンディ・ラウが「何かネタはないか?」と声をかけてきまして、このお蔵入りになっていた企画をプレゼンしたところ、音楽を功夫に置き換えたらどうか?ということになりまして。ちょうどその頃、(『イップ・マン』の大ヒットもあって)功夫映画が息を吹き返しつつあったということも後押しになったんですが。
それで、現在のようなカタチの脚本がつくられたワケです。また、最近の若い観客には、ブルース・リャンのような偉大な功夫スターを知らない人も増えてきているので、彼らに「古くても、いいものはいい」ことを知ってほしかったという、僕たちの思いも込められています。

チェン監督:私とデレクは映画ファンで、世界中のいろいろな映画を観ています。日本ならば高倉健や北野武、ハリウッドならばクリント・イーストウッドの作品をこよなく愛しているのですが、そのような感じで熱狂できる映画が香港にはなかったんですね。そうならば、自分たちで撮ってしまおうと思いまして。
©2010 TIFF


Q4:『ギャランツ~』では、師匠役のテディ・ロビンが30年の眠りから蘇ります。クォック監督の最新作『Frozen(中国語原題:為●(人べん+尓)』(10)でも、主人公が冷凍睡眠から目覚めることによって話が展開していきます。このような手法が多用されるのには、どのような思いや狙いが込められているのでしょうか?

クォック監督:質問された方は『ギャランツ~』と『Frozen』で・・・とおっしゃっていましたが、じつは僕の第2作『The Moss~エメラルドの童話~(中国語原題:青苔)』(08)にも、意識を失うキャラクターが登場します。自分でもなぜかはわからないんですが、人が寝ているとか、意識を失っているという状況に、とても興味があるんです。当事者にとっては「ほんの一瞬」という感じでありながら、実際は何年もの時間が流れていたりする。それは、いってみれば、タイムマシンに乗って時間旅行をするようなものではないでしょうか。僕はいつも時の流れと人の関係について考えているんですが、環境が変わっても、どんなに世界が変わっても、人間の本質は変わらないと思っています。いいものは残り続け、よくないものは一瞬の幻のように消えていく。そんなことばかり考えているので、僕の映画には意識を失った人が登場するのかもしれません。

Q5:やはりどうしても気になってしまうので、質問させてください。劇中、何度も登場する“アヒルの燻製”です。あれに込められた意味を教えてください。

チェン監督:いくつか理由があります。まず、あれはかなり臭いんです。死体みたいな臭い。でも、料理するとめちゃめちゃ美味しい。ですが、脂身は多いわ、塩味はキツいわで、ヘルシー志向の若い人は食べようとしないんですね。これは、とてももったいないことなんじゃないかと。これがまず1点。次に、途中でアヒルがニワトリに変わりますよね? あれには、考え方や精神性にブレがなければ「大事なものは変わらない」という思いが込められています。そしてもうひとつの理由が、アヒルの燻製は広東語で“蝋鴨”(らっぷあっぷ)というんですが、この発音がゴミを意味する“○(土へん+立)●(土へん+及)”(らっぷさっぷ)と。これが意味するのは、興味がない人にはゴミみたいなものでも、それを愛してやまない人もいるんだ、ということです。

クォック監督:映画の台詞で、師匠が「自分はひとりの人間にすぎない、武館もひとつの場所でしかない」といいますが、この言葉を借りれば「アヒルの燻製は食べものにすぎない」。劇中、弟子たちがニワトリを使って、ひどいニセモノのアヒルの燻製をつくりますが、そのものよりも、師匠を思う弟子たちの気持ちが大事なのだ、ということを伝えたかったのです。
©2010 TIFF


『ギャランツ~シニアドラゴン龍虎激闘』
©Focus Films Limited




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