Home > ニュース > 「映画を観た時の自分の気持ち、心打たれるものがあるかどうかによって、判断したいと思います。」―10/25(月)コンペティション国際審査委員 公式記者会見のご報告
ニュース一覧へ 前のページへ戻る previous next
2010.10.25
[イベントレポート]
「映画を観た時の自分の気持ち、心打たれるものがあるかどうかによって、判断したいと思います。」―10/25(月)コンペティション国際審査委員 公式記者会見のご報告
10月25日(月)17:00より、TIFF movie caféにて、コンペティション国際審査委員の皆様をお迎えして公式記者会見が行なわれました。

■ 登壇者 ニール・ジョーダン(審査委員長)、ジュディ・オング、ドメニコ・プロカッチ、ホ・ジノ、根岸吉太郎

第23回東京国際映画祭の最終日にはコンペティション部門に選ばれた15作品の中から、栄えある東京 サクラ グランプリを始め、各賞の受賞者が発表されます。その審査を担当してくださる5名の審査委員の皆様をお迎えして、記者会見が行われました。
左から根岸吉太郎さん、ドメニコ・プロカッチさん、ニール・ジョーダンさん(審査委員長)、ジュディ・オングさん、ホ・ジノさん ©2010 TIFF


ニール・ジョーダンさん: 素晴らしい審査員の方々とここにいられることを嬉しく思います。さて、受賞者の発表です!というのは冗談で、まだ映画を観始めて2日間ですが、これから観る作品についても非常に楽しみにしています。第1回東京国際映画祭で私の作品である『狼の血族』が上映されました。その時は観客の皆さんと一緒に映画を観て、その反応を見ることもできましたが、今回は審査委員として私たちだけで映画を観て審査をしなければならないので、また違った体験になると思います。
©2010 TIFF

ジュディ・オングさん: 初めてこの大役を仰せつかりまして、本当に緊張して、しかし楽しみながら既に5作品観させていただきました。私にとって映画というものは、小さい時から知らない世界を覗くための窓、と言う風に思っています。今回はそういう映画、皆さんの力作を審査しなくてはならないということで、真面目に且つ楽しみながら観させていただいております。
©2010 TIFF

ドメニコ・プロカッチさん: 審査委員としてお声をかけていただいた時は大変驚きましたが、すぐにお引き受けしました。ここにいる皆さんと一緒に審査できることを嬉しく思います。とりわけ審査委員長のジョーダン氏は私が尊敬する監督ですから。実は数年前、東京で撮影された映画を酒井園子さんと共同プロデュースしています。役所広司さんと中谷美紀さんが主演している『シルク』という映画です。それ以来の東京となります。ご招待いただいて本当にありがとうございます。
©2010 TIFF

ホ・ジノさん: 韓国から参りました映画監督のホ・ジノと申します。東京には仕事で何度か来ていますが、今回も審査員ということで、あまり観光する時間を持てそうにありません!実は9年前の東京国際映画祭のコンペティション部門に、私の『春の日は過ぎゆく』という作品で参加しました。
今回は審査員として参加できること、そしてニール・ジョーダン監督を初めとする素敵な審査員の皆さまと審査ができることを光栄に思います。
©2010 TIFF

根岸吉太郎さん: 日本から参りました根岸吉太郎です!皆さん二日間映画を観たと言っていましたけど、ものすごく真剣に映画を観てその映画について語って、僕も勉強になりますし、作品を出品するよりもこれは結構厳しいことなんだなと思っています。今日の世界の映画が何処にあるのか、世界の国々がどんなことを映画を通じて考えているのかということを学びながら真摯に審査をしていきたいと思います。同時に、審査をしていることを忘れるような映画に出会うことも願っています。
©2010 TIFF

―― 続いて、それぞれの審査の基準となるものについてお話しいただきました。

ジョーダンさん: 映画だけではなく、独創性豊かな芸術作品は、何か心を掴むものがあるのかどうか、首尾一貫していて独自の美しさを持っているかどうかが大切です。そういった観点から映画を観たいと思います。映画を観た時の自分の気持ち、心打たれるものがあるかどうかによって、判断したいと思います。

オングさん: 私はマルチカルチャーで育てられ、自分の中に入って行く色々な道があります。ジョーダンさんがおっしゃったように国境を越えて心を捕まえてくれるもの、また、根岸監督がおっしゃったようにジャッジをしていることを忘れてしまう程の作品、これはどうだろうかといったことを考えている間もなく、グーっと引っ張り込まれてしまう作品が心に残る作品になると思います。

プロカッチさん: 映画を審査するということは、非常に主観的な仕事です。5人の審査員がいますが、それぞれ違った捉えた方をするでしょう。何か心打つものがあるのか、おもしろく心を動かされるストーリーであるのか、私の心と頭がそれをどのように受け止めるのかといったことが審査のポイントとなります。

ホ・ジノさん: 監督である私が、他の監督の作品を審査するということは難しいことです。映画を見た時に心を揺さぶられるものがあるかどうか、その揺さぶりが真実として自分の心に迫ってくるものであるかどうか、そういったことから審査をして行きたいと考えています。
根岸さん: 心を動かされるという点については皆さんと同じですが、自分なりに言えば、映画が終わって10分くらい経っても作り手の強い意志を感じ続けられるものを選びたい。それと同時に、その作り手が上手く顔を隠しているなという映画がベターだなと思います。
null
©2010 TIFF

―― インターネットやモバイル機器の普及などで、人々のライフスタイルが変動期にあるということ。海賊行為も少なくないことを始めとする映画を取り巻く環境や問題点についてのコメントもいただきました。そして、映画祭の重要性、今後の映画について:

ジョーダンさん: 今、世界の映画界は危機に直面しています。日本や、私の母国アイルランドに限らず、欧州でもアメリカでもなかなか小さな映画が観客を得ることができないのが現状です。作品が映画祭を転々とするだけといったかたちで安売りされてはいけないと思います。もちろん映画祭は、作品を紹介するきっかけとして重要ではありますが、そこに留まらず、作品が世界の映画館で上映されることが重要です。そういった価値のある作品に出会えることを期待しています。

根岸さん: 映画が世界に出てきてから120年くらいの月日が経っています。その間に巨匠の時代、起承転結のあるストーリーを語る映画は、ジャンルやスタイルを含めて、ある意味食いつくしてしまったのだと思います。それが危機のひとつの要素です。今は足踏みをしていますが、映画は成熟の時期に向うと思います。携帯電話でハイビジョンが撮れる時代になりましたが、スクリーンの大きさには意味があると思っています。
小さなモニタ―で見るものと違って、大きなスクリーンに映し出されることに耐えうる作品を自分達がいかにこの時代、作り出せるかということに懸けていきたいなと思います。
©2010 TIFF


小さな作品でも人の心を動かすことができればスポットライトを浴びることができること、そして、普段観る機会の少ない各国の力作を体験できることも映画祭の魅力。東京国際映画祭の最終日、国際審査委員が選んだ「人を驚かせたい、感動させたいという気持ち」が最も伝わってくる映画に、東京 サクラ グランプリが授与されます!




previous next
KEIRIN.JP本映画祭は、競輪の補助を受けて開催します。TIFF History
第22回 東京国際映画祭(2009年度)