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2010.10.25
[インタビュー]
WORLD CINEMA 『素数たちの孤独』サヴェリオ・コスタンツォ監督、 アルバ・ロルヴァケルさんインタビュー(10/25)

サヴェリオ・コスタンツォ監督、 アルバ・ロルヴァケルさん

『素数たちの孤独』は過去にトラウマを負った少年少女の人生を追った、イタリアで爆発的なベストセラーとなった原作の映画化であるが、大胆な時制の組み替えによって、原作の読者も全く新しい驚きを感じることができる斬新な映画に仕上がっている。ベネチア国際映画祭コンペティション部門にも参加した話題作が<WORLD CINEMA>部門で上映された。サヴェリオ・コンスタンツォ監督とアリーチェを演じた若手実力派女優アルバ・ロルヴァケルさんにお話をうかがった。
©2010 TIFF


――原作はイタリアで2008年最大のベストセラーとなり、三十カ国以上で翻訳された話題作です。映画は原作の良さを生かしつつ、映画であることの特性を生かした独自の世界を作り上げていると思いますが、イタリアでの反応はどのようなものだったんでしょうか?

サヴェリオ・コンスタンツォ監督(以下 コンスタンツォ):よくあることだと思いますが、読者の反応は分かれました。原作が気に入った人は、裏切られたような思いを抱いた人もいたようですし、原作がそうでもなかった人は、もっと自由に映画に出会え、映画の良さを受け取ってくれたようです。

――脚本は原作者のパオロ・ジョルダーノ氏との共同執筆ですよね。非常に巧くクライマックスを作り上げていたと思いますが、時制を組み替えたのは監督のアイディアですか? ジョルダーノ氏と意見が対立したりはしなかったんでしょうか?

コンスタンツォ:共同作業に意見のぶつかり合いはつきものですが、基本的にはスムーズに進みました。映画を複雑な構造にしたのは、すでに一度物語を体験している読者を遠ざけなければいけない、別の形で提示しなければいけなかったからです。誠実に映画にするには、変えなければいけない部分があった。ジョルダーノ氏はその部分に関しても、非常に勇気を持って自分に自由を与えてくれました。彼にとっては失うものもあったはずですが。
私は時制を切断したり組み替えたりしましたが、それは映画は記憶を蘇らせることができるからです。私たちは、記憶を子供たちの映像にイメージとして重ねることができる。子供時代の記憶を理解するのは現在なのです。その時、分からなかったことも後から振り返って理解することができる。

――共同執筆はどのような形で?

コンスタンツォ:一週間ずっとセッションをして、というようなことを繰り返して、脚本執筆には一年間かかりました。時制を組み替えるのは私のアイディアですが、最初からそう考えていたわけではありません。最初は時系列で考えていましたがある時点で変える必要があると思い、この形にしました。
©2010 TIFF

――マッティアもアリーチェも原作のイメージどおりに、傷を負いながらも内に強いものを秘めた感じがよく出ていました。子供時代から青年時代まで、キャスティングはどのように行ったんでしょうか? 

コンスタンツォ:アルバとルカに似ている子供を捜しながらトリノの街を歩き回りました。似ているかどうかというのが一番難しかったですね。

――観客の間でも、マッティアの少年時代の俳優と、青年時代の俳優(ルカ・マリネッリ氏)が兄弟みたいに似ていると話題になっていましたが…。

コンスタンツォ:兄弟ではないです。幸運でした。少年時代を演じた子のお母さんが、ルカを見て泣き出したんですよ。自分の子が大きくなった姿を見ているようだと言って。

――二人が歳を重ねていき、肉体が変化していく様子が強調されているように思いました。7年後再会する時に、アリーチェは激痩せしマッティアはがっしりと肉がついていて、その対比がユーモラスでいて悲しいようないい感じが出ていると思ったのですが、俳優さんは苦労されたのでは?

アルバ・ロルヴァケル:確かに難しかったけれど、同時にすごく深い仕事ができたと思っています。頭を使ったり心理的な作業をするよりも、人物を作るためには有効でした。具体的に体を使い苦しみを実際に体で感じることによって、純粋にその人物であることができたのではないかと思っています。
©2010 TIFF


(聞き手:夏目深雪)


『素数たちの孤独』


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