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2010.10.23
[イベントレポート]
「ほんとうに深刻な問題を抱えるひとは、それを深刻そうに人に見せたりしないものだ」 - 10/23(土)『酔いがさめたら、うちに帰ろう。』:Q&A

東 陽一監督

10/23(土)、第23回東京国際映画祭開幕しました!

日本映画・ある視点 オープニング作品、ワールド・プレミア『酔いがさめたら、うちに帰ろう。』が上映されました。
上映後のQ&Aには、東 陽一監督が登壇。作品と同様、暖かい雰囲気に包まれたQ&Aとなりました。
笑顔が素晴らしい東 陽一監督
©2010 TIFF

まずは司会者から、東監督に最初の質問。
※Q&Aには作品の内容に触れる部分がございます。ご注意ください。

――監督は、(主人公の)塚原役には浅野忠信さんに決められてお書きになったということですが。

東 陽一監督「そのとおりです。決めて、といっても脚本が出来て彼にお渡しして彼が出るって言ってくれなきゃだめなのですけれども、頭の中では浅野忠信という人で進行してて、出てほしいと思って脚本を書きました。なぜというのを話すと1時間くらいかかるんですが、ともかく日本にはたいへん優れた俳優さんたちがたくさんいますけれども、この映画だったら彼しかいないと思いました。」

会場より質問(以下、Q:)映画の中のアルコール依存症患者についてなんですが、監督が演出する上で誰か体験者の方に取材されたり、病院に取材されたりなどあればお聞かせください。

東 陽一監督「その質問にお答えする前に、お客さんにまだ挨拶をしてなかったのですけれども、土曜日のいい天気の早くにですね、よそに遊びに行かないでこの作品を見に来て頂いてありがとうございました。あまり意地悪い質問は受けないように期待しています。

当然どういう監督がやるにしてもこういう題材を扱う以上たくさん調査します。実際にアルコール依存症の人たちが入院している病院を見学させて頂いたり、専門のそれぞれ違った立場のお医者さんの話も伺いましたし、この映画を作った会社が10年くらい前に作ったアルコール依存症のドキュメンタリー映画も見ましたし、やるべきことはほとんどやっています。ドキュメンタリー映画を作るわけではないのでいろんな話を聞きながら、つまりAのお医者さんとBのお医者さんとCのお医者さんがまったく別のことを言うんですよ。そういう場合は僕が勝手に考える。
ドラマは現実に基づいてますが、映画はフィクションですから監督が想像力で進めていいところは自由に進めてます。」

――ほんとうにああいう病院があるんじゃないかと思ってしまいますよね。

東 陽一監督「最近、関西で元アルコール依存症患者が集まる会で試写をしたのですが、病院のシーンでみんなゲラゲラ笑い転げてました。理由は俺たちがやってきた行動にそっくりだということなんです。現場の看護師さんがいらっしゃいまして、ほんとうに面白かったということと、わたしたちが毎日病院で体験してることと同じだとおっしゃられてました。」

Q:この話は鴨志田譲さんと西原理恵子さんの実話で病気の話ですし軽やかなものではないと思うのですが、重いものがベースにありつつすごく見やすく、コメディタッチのところもあったのですが、見やすい演出をしたというのは意図的だったのかということと、演出で気にされた点を教えてください。

東 陽一監督「軽い感じがするというのには2つの要素がありまして、ひとつは原作がそういうふうに書かれているというのがあります。自分の深刻な病気を深刻に描写していないというのがあります。2つめには、わたし自身が考えることですが、ほんとうに深刻な問題を内部にもっているひとはそれをいかにも深刻そうに人に見せたりしないものだと私は考えています。その2つの点からああいう演出になったと思います。

現場の演出にはなんの問題もありませんでした。わたしはほとんど何もしてません。みなさんが現場で動くのをじっと眺めていて、ちょっとカメラこのへんで止めようかというクリント・イーストウッドに似たやり方をした、結果的になった、ということですが(笑)そういうことしかやっておりません。」

――監督は演出なされるときは早いのですか?

東 陽一監督「早いとはまったく思ってませんが、スタッフが今日は徹夜になると思っていたら、17時くらいに終わってしまうとかそういうことが多かったです(笑)」

――経費節減で素晴らしいですね(笑)

Q:もっと重い感じなのかと思ったら笑える場面が多くてとても面白い映画でした。特に僕が印象的なのは塚原さんがやっとカレーを食べられるときに、僕もカレー好きなのであれはほんとに僕も嬉しさを共感できたと思います(笑)
永作博美さんと市川実日子さんが色を塗ったりペン入れをしているのは、プロの作家さんのところに行ってリサーチをされて訓練されたのでしょうか。

東 陽一監督「最初にされたのは質問じゃなくて感想ですよね?(笑)それについてひとつ補足をしておきます。ハンナ・アーレントというハイデガーの恋人だったと言われる歴史哲学者がいるのですが、「わたしは死ぬ3分前にも笑うでしょう」という名言を残しています。わたしはそういう生き方にたいへん共感する人間でもあるので、深刻な話をするときに笑いながら話しているということがあるとおもいますね。

絵を描いているシーンはモデルになっている漫画家の西原理恵子さんの仕事場にお邪魔して、助手さんと2人で絵を描いているところを全部ビデオで撮影してきまして再現したわけです。ですので、西原理恵子さんのやり方を模倣しています。」

――すみません。あと一問しかなくなってしまいました。短いですね。

東 陽一監督「質問したい方、僕はこの会場の外にいますから後で質問があれば受けますから。」

Q:とても素晴らしい作品で、見られたことを嬉しく思います。質問が2つあります。1つは浅野さんや病院関係の方たち役名は苗字でしたが、家族だけが名前だけで呼ばれていてそれがすごく生活感があったんですけれど、看護師で1人だけ名前で呼ばれていた人がいたのはなぜか?ということと、最後のクレジットに西原理恵子さんの名前があってどこに出ていたのか気づけなかったんですけど、どこに出ていたのか教えてください。

東 陽一監督「最初の質問は主人公が看護師に名前を聞くところのシーンのことだと思うのですが、主人公が彼女に対して性的興味があったという単純なことです(笑)
他の看護師さんには名前を聞きたくなるほどの魅力を感じなかったという。よくあることです(笑)

西原さんがどこに出ていたのかわからないお客さんのほうが私にはありがたいです(笑)
我々は西原さんと元夫であった鴨志田さんの原作を元に映画を作っているわけですけど、わたしたちはそっくりショーをやっているわけではないので、(物語を)まったく知らない人が見ることを前提に映画を作っているわけです。西原理恵子がここに出ているので見てくださいという宣伝をするつもりは毛頭ありませんから。でも、最初に入った精神病院の中でたくさんの女性患者の中のひとりで映っていますが気がつかないほうがいいです(笑)」  

――それは劇場でまた見て確かめてくださいね。1回といわず5回でも何回でも。ひとつひとつが深いんですよ隠しワザが。

ここで、延長の追加質問OKに!
――もうひとつオマケで質問増やします。絶対に恥ずかしくないという質問がある方どうぞ!(笑)

Q:西原さんもこの(作品で描かれた)件に関しては、著作などでいろいろ書かれていますが、監督はどの程度ご覧になって、どのくらい参考にされて含めようとされているか。実際西原さんが、鴨志田さんが亡くなった後に、子供たちが私を笑わせてくれたということを叙情的に書かれている著作があるので、そういう内容を含めるという手もあったと思うのですが、そういうことをされなかったのはどうしてかということをお答えいただけますか。

東 陽一監督「西原さんご本人は使ってくれていいよと言ってくれていますが、じつはその漫画を連載している新聞社の方がこれを使うと著作権侵害になるから使わせないぞ!と言うから、そういうことは一切やらないぞ!とわたしのほうで決めたわけです。

現在では著作権というのは漫画家だけではなくてその漫画を出版する出版社のほうにも非常に大きく決定権があるそうです。」

――この後監督は質問のある方に直接個別で答えていただけるそうです。

東 陽一監督「誰も来なかったりしたらかっこ悪いな(笑)」

――それでは監督どうもありがとうございました!

©2010 TIFF


酔いがさめたら、うちに帰ろう。
©2010 シグロ/バップ/ビターズ・エンド
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