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2010.10.27
[イベントレポート]
10/27(水)コンペティション 『一粒の麦』Q&A+記者会見
■ Q&A:10月27日(水) 13:28~ @TOHOシネマズ スクリーン6
  記者会見:10月27日(水) 16:00~ @TIFF movie café

■ 登壇者 シニツァ・ドラギン(監督/プロデューサー/編集)、イオアナ・バルブ (女優)、シモーナ・ストイチェスク (女優)

©2010 TIFF

記者会見に先立ち、TOHOシネマズのスクリーン6での上映後、一般の観客の皆さんとのQ&Aが行われました。劇場内がラストシーンの余韻に浸る中、監督ドラギンさんと女優のイオアナ・バルブさん、そして本日来日したばかりのシモーナ・ストイチェスクさんにご登壇頂きました。

シニツァ・ドラギン監督(以下、監督): 日本に来て以来、何もかもがきちんとしていて秩序的である中、これ程多くの皆さんが平日のこの時間にここにいらっしゃるということは、仕事をさぼっている人もいるのではないでしょうか!でも来ていただけて、本当にありがとう!

イオアナ・バルブさん: TIFFに参加できることは、嬉しい驚きです。同じように、この映画が皆さんにとって素晴らしい驚きであることを願っています。

シモーナ・ストイチェスクさん: 実は、完成された映画を見るのは今が初めてだったので、まだ心臓がドキドキしています!とても感動していますけれど、皆さんも同じ気持ちでありますように!上映中も皆さんと共感していたような、プラスのエネルギーを頂いた、そんな気がしました。

――映画のアイディアとタイトルについて監督にご説明いただきました。

監督: まず、映画のアイディアは、ルーマニアの北西部、かつてはハンガリー帝国の一部であった地域に伝わる伝説を元にしています。10年程前に読んだのですが、当時からこれを映画にしようと心に決めていました。ただ、その伝説をそのまま映画にするのではなく、現代の物語を盛り込みたいと思ったので、そうする方法を見出すための時間が必要でした。伝説と、現代の人々が一生懸命やり遂げようとしている姿を同時進行させようと考えました。映画のタイトルですが、大分前から頭の片隅にあった聖書のことばです。映画のキーポイントとなるタイトルであると思っています。私は物事をあまりにもわかりやすく描くことは避けたいと思っています。観て考えていただいて、それぞれがそれなりの解釈や答えを見出していただきたいと考えています。監督の仕事はヒントを提供すること。その先は、観て下さっている方の仕事です。
そしてムービカフェで行われた記者会見でも、時間ぎりぎりまで多くの質問にお答えいただきました。

Q: 大変多くの言語が出てきますね?

監督: 多くの言語を取り入れること自体が、地域の状況を表しています。使われていたのは、ルーマニア語、セルビア語、ドイツ語、英語、スペイン語、ベトナム語、スワヒリ語です。ハンガリー語が出て来たシーンはカットしました。
バルブさん: イナは、強制的にコソボで娼婦にされた女性で、アメリカの軍人を相手にしなければならなかったことから英語を少し話します。それからルーマニア語を話します。

ストイチェスクさん: 私が演じたノラは、セルビア語、ドイツ語、ルーマニア語を話す設定でしたが、ドイツ語とセルビア語の台詞を覚えるのに苦労しました。でもとても興味深い経験でした。

Q: タクシー運転手はスペイン語を話していたようですが?

監督: 彼は少しスペイン語を話します。また、革命後、多くのルーマニア人が仕事を求めてスペインへ行きました。ですから、ルーマニア人であれば、当時スペインへ出稼ぎに行っていた男なんだなということがわかります。

Q: 監督は、監督だけではなく、プロデューサーであり、編集も担当されました。この映画を作りたいと思った一番の動機は?

監督: 色々な理由があります。その作品を制作する自分の年齢や年代にもよります。この作品については、昔からのものを守るという考え方に焦点を当てたかったんです。個人的には、私の暮らす土地の人々にそこに留まってほしいという気持ちがあります。あまりグローバル化せずにいてほしいと願っています。伝説の中の人々のように、重要なのは、その土地に留まろうとすることです。教会を建てていけないなら、他の方法を考えようと教会を移動させる。気持ちを貫くことの重要性を訴えたかったんです。

Q: 最初に脚本を読んだ時の感想は?

バルブさん: 映画の中では3つの出来事が同時進行し、上手く交わっています。私は娼婦役でしたが、とてもアグレッシブなレイプシーンでしたから、どう描かれるのかと少し心配でした。これまでで一番難しい作品だったと思います。

ストイチェスクさん: 第一印象は、また娼婦!と思いました。映画、芝居、テレビでも娼婦を演じてきて、ノラは6人目か7人目だったと思います。同じ職業であっても違った個性を出そうと努力しています。でもノラ特別で、自分の意志で娼婦になり、彼女は人生を満喫し、男性を幸せにしてあげたいと願っている、そういったこれまでとは違った娼婦の役です。脚本を初めて読んだ時から素晴らしい映画になると信じていました。

バルブさん: 私も娼婦を演じた経験があります。オーディション当時、国連NGOのセーブ・ザ・チルドレンというプロジェクトに参加していました。ルーマニア国内の困難な状況下にいる子どもたち、人身売買で売春させられている女の子たちを支援する活動の一環として、学校で公演される芝居に出演していました。そういった背景からも、レイプのシーンは演じるのも難しかったですが、見ているのも辛い場面でした。

監督: 現在の東欧を描くという観点から、残念なことに娼婦の存在は避けられません。ですから対照的な娼婦を登場人物に入れました。対象的な二人の存在によって、皆さんにその辛さなども理解してもらいたい、そのように考えました。

一粒の麦
©MRAKONIA FILM, WEGA FILM



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