2010.10.29
[インタビュー]
アジアの風『赤とんぼ』リャオ・チエカイ監督インタビュー(10/29)
中国系シンガポール人で、シカゴ美術館附属美術大学で学んだ後にシンガポールに帰国し、プロデューサーや映画スタッフの仲間と「13リトル・ピクチャーズ」を立ち上げて、短編“The Inner City”を経て初の長編『赤とんぼ』を作り上げたリャオ・チエカイ監督に話を聞いた。
――素晴らしい作品でした。若者の歩行旅行ということで、『スタンド・バイ・ミー』と比較されることもあると思います。他にも日本映画では『鉄塔武蔵野線』や、アメリカ映画の秀作“The Station Agent”にも似たシチュエーションです。
『スタンド・バイ・ミー』は確かに比較されることがありますが、意識はしていませんでした。残りの2本は知らないですが、どんな映画でしょうか?
――『鉄塔武蔵野線』は小学生の少年が送電線の鉄塔を探訪しながらそのルーツを辿っていく日本映画で、“The Station Agent”は男性の小人を交えた男二人女一人のロードムービーのアメリカ映画で、『扉をたたく人』のトーマス・マッカーシー監督作品です。
面白そうですね。今度観てみます。今作は実体験を基にしていて、少年二人と少女一人が歩いていくことで、10代特有の精神状態を描こうとしました。セミドキュメンタリーのような作風になったのは低予算のためもあります。
――素人とはいえ、出演者がとても自然な演技をしていました。どのようにオーディションと演出をしたのでしょうか?
レイチェル役のン・スアンミンがオーディションで素晴らしかったので、彼女と合う二人の青年役を選びました。映画を見れば分かりますが、実際に撮影現場でも彼女がリードしてくれてとても助かりました。
――私も助監督しているときに素人がメインの作品にスタッフで入ったことがあるのですが、素人は1回目の演技が自然で2回目以降は無理に演技をし始めてしまう傾向があります。今作ではいかがでしたでしょうか?
その傾向は確かにありましたが、3人とも慣れてくると、2回目が良い場合もありました。ただ、時間がないのと自然な表情が欲しかったので、テイク数は少なかったです。一方にだけ演出意図を教えて、相手役には知らせずに自然な演技を引き出すこともしました。
――シカゴ美術館附属美術大学で学んでいらっしゃいますが、どのようなことを学び、映画を撮るようになったのでしょうか?
ヴィジュル・アーツを学んでいたのですが、途中で行き詰まってしまったことがあって一度やめました。その後、パフォーマンス・アートを始めました。
――実際に演技を人前でしたということでしょうか?
そうです。とても大きな経験でした。
――演じる側をやってみると演出にとても役立ちますよね。
はい。そこでもう一度ヴィジュアル・アーツ、特に映画を撮ってみたいと思い、帰国してから仲間と「13 リトル・ピクチャーズ」を立ち上げました。
――即興的に自由に撮った作品なので編集の重要性が増したと思いますが、その点はどうでしたか。また、編集は映画においてとても重要ですが、編集をどのようにとらえていますか。
後者の質問から先に答えると、編集はとても大事で映画の命とも言えます。そして編集することは大好きです。実際、今作でも編集に時間をかけましたし、実は自分が編集した監督編集バージョン、プロデューサーが編集したバージョン、撮影監督が編集したバージョンの3バージョンを作ってテスト試写をしました。
――それはテスト試写として3本を同時に観せたんですか?
観る人たちは疲れてしまって失敗でした(笑)。
――そうなると、最初に観せたものが一番印象がいいでしょうね(笑)。
だから、自分の編集バージョンを1本目にしました(笑)。でも、3本とも全く違うものになったのは興味深い経験でした。プロデューサーは時間軸に忠実に編集し、撮影監督は画的に優れたものを優先して編集していました。「13 リトル・ピクチャーズ」は小さいながらも、全員がオールジャンルができるスタッフ集団なので、このようなことが可能なのは強みだと思っています。
――次回作の構想が決まっていたら教えてください。
次の作品ではシンガポールの歴史を描きたいと思っています。わたしも中国系ですが、シンガポールは移民で構成されていて、アメリカのよう国なのです。ただ、14世紀以前は歴史的な記述しかなく、神話しかないんです。移民社会で、ある時代以前は歴史事項の記述が残っていないのもアメリカに似ていると思います。
――シンガポールの歴史がそのようなことだったとは知らなかったです。
そうですよね。知られていないからこそ、そのことを描いた映画を作ろうと思っています。神話的な要素も入れようと思っています。興味深い内容になると思いますので、楽しみにしていてください。
『赤とんぼ』
→作品詳細
©2010 TIFF
――素晴らしい作品でした。若者の歩行旅行ということで、『スタンド・バイ・ミー』と比較されることもあると思います。他にも日本映画では『鉄塔武蔵野線』や、アメリカ映画の秀作“The Station Agent”にも似たシチュエーションです。
『スタンド・バイ・ミー』は確かに比較されることがありますが、意識はしていませんでした。残りの2本は知らないですが、どんな映画でしょうか?
――『鉄塔武蔵野線』は小学生の少年が送電線の鉄塔を探訪しながらそのルーツを辿っていく日本映画で、“The Station Agent”は男性の小人を交えた男二人女一人のロードムービーのアメリカ映画で、『扉をたたく人』のトーマス・マッカーシー監督作品です。
面白そうですね。今度観てみます。今作は実体験を基にしていて、少年二人と少女一人が歩いていくことで、10代特有の精神状態を描こうとしました。セミドキュメンタリーのような作風になったのは低予算のためもあります。
――素人とはいえ、出演者がとても自然な演技をしていました。どのようにオーディションと演出をしたのでしょうか?
レイチェル役のン・スアンミンがオーディションで素晴らしかったので、彼女と合う二人の青年役を選びました。映画を見れば分かりますが、実際に撮影現場でも彼女がリードしてくれてとても助かりました。
――私も助監督しているときに素人がメインの作品にスタッフで入ったことがあるのですが、素人は1回目の演技が自然で2回目以降は無理に演技をし始めてしまう傾向があります。今作ではいかがでしたでしょうか?
その傾向は確かにありましたが、3人とも慣れてくると、2回目が良い場合もありました。ただ、時間がないのと自然な表情が欲しかったので、テイク数は少なかったです。一方にだけ演出意図を教えて、相手役には知らせずに自然な演技を引き出すこともしました。
――シカゴ美術館附属美術大学で学んでいらっしゃいますが、どのようなことを学び、映画を撮るようになったのでしょうか?
ヴィジュル・アーツを学んでいたのですが、途中で行き詰まってしまったことがあって一度やめました。その後、パフォーマンス・アートを始めました。
――実際に演技を人前でしたということでしょうか?
そうです。とても大きな経験でした。
――演じる側をやってみると演出にとても役立ちますよね。
はい。そこでもう一度ヴィジュアル・アーツ、特に映画を撮ってみたいと思い、帰国してから仲間と「13 リトル・ピクチャーズ」を立ち上げました。
――即興的に自由に撮った作品なので編集の重要性が増したと思いますが、その点はどうでしたか。また、編集は映画においてとても重要ですが、編集をどのようにとらえていますか。
後者の質問から先に答えると、編集はとても大事で映画の命とも言えます。そして編集することは大好きです。実際、今作でも編集に時間をかけましたし、実は自分が編集した監督編集バージョン、プロデューサーが編集したバージョン、撮影監督が編集したバージョンの3バージョンを作ってテスト試写をしました。
――それはテスト試写として3本を同時に観せたんですか?
観る人たちは疲れてしまって失敗でした(笑)。
©2010 TIFF
――そうなると、最初に観せたものが一番印象がいいでしょうね(笑)。
だから、自分の編集バージョンを1本目にしました(笑)。でも、3本とも全く違うものになったのは興味深い経験でした。プロデューサーは時間軸に忠実に編集し、撮影監督は画的に優れたものを優先して編集していました。「13 リトル・ピクチャーズ」は小さいながらも、全員がオールジャンルができるスタッフ集団なので、このようなことが可能なのは強みだと思っています。
――次回作の構想が決まっていたら教えてください。
次の作品ではシンガポールの歴史を描きたいと思っています。わたしも中国系ですが、シンガポールは移民で構成されていて、アメリカのよう国なのです。ただ、14世紀以前は歴史的な記述しかなく、神話しかないんです。移民社会で、ある時代以前は歴史事項の記述が残っていないのもアメリカに似ていると思います。
――シンガポールの歴史がそのようなことだったとは知らなかったです。
そうですよね。知られていないからこそ、そのことを描いた映画を作ろうと思っています。神話的な要素も入れようと思っています。興味深い内容になると思いますので、楽しみにしていてください。
(聞き手:わたなべりんたろう)
『赤とんぼ』
→作品詳細