2010.10.29
[イベントレポート]
コンペティション 10/29(金)『ブライトン・ロック』Q&A+公式記者会見
Q&A : 10月29日(金) 13:21~ TOHOシネマズ SC6
記者会見: 10月29日(金) 14:15~ @TIFF movie café
■ 登壇者 ローワン・ジョフィ (監督)
冒頭の挨拶で、「東京国際映画祭は私の一番大好きな映画祭です」とおっしゃってくださったジョフィ監督。以前に一度、観光客として、東京、京都、箱根、広島を訪れ、今回の二度目の日本も満喫していらっしゃるというジョフィ監督にお話を伺いました。
Q: 有名な小説を映画化することになった経緯を教えてください。
ローワン・ジョフィ監督(以下監督): 当初、フランスのスタジオ・カナルからお話をいただきました。そして『ブライトン・ロック』のリメイク版を撮らないかと持ちかけられました。実のところ、最初は断ったんです。ここにいる多くの皆さんも同感かもしれませんが、基本的にリメイクは好きじゃないんです。でも原作の小説は本当に好きだったので、シェイクスピアの芝居が何度もリメイクされているように、別バージョンをつくるというかたちで取り組むことができるのではと考えました。
グレアム・グリーンの小説との出会いは、たぶん15歳くらいの頃だったと思いましたが、学校の授業でこの本を読みました。当時は暗くて、冷たくて、難しい本という印象を受け、あまり好きではありませんでした。スタジオ・カナルから映画の話を持ちかけられた時、本棚にあった本を手にしました。当時読んでいたもので色々と書き込まれていたものですが、しっかり読み直してみると、とても興味深いラブストーリーであることに気づきました。犯罪者と目撃者、毒のあるしかしパワフルな人間関係、とてもダークなラブストーリーです。
Q: 原作は1939年を舞台にしていますが、作品は1964年の設定になっています。もっと現代に、例えば2010年に置き換えることを考えられましたか?
監督: 脚本を書く以前には、現代を舞台にすることも考えました。壊れたレコードの代わりに傷の入ったCDを使うべきか等といった具体的な検討事項は別として、どうしても現代に置き換えにくい要素は、ローズの純粋さでした。インターネットやツイッター、ケーブルテレビが存在する現代においてローズのようなウブな箱入り娘は、現実的ではありません。
Q: そのようなローズ役の役作りについて、アンドレア・ライズボローとはどのように話し合いましたか?
監督: 彼女は、現在活躍しているあの年代で最も素晴らしい女優だと思います。アンドレアは、演じる役によって、全くの別人になることができます。おそらくこれまでにそのような才能に恵まれた女優は、メリル・ストリープだけだと思います。70年代のことでしたけど。アンドレアは、これからますます期待できる女優です。スターというわけではなく、ラブストーリーで主役を張るようなタイプの女優ではありませんが、まるでカメレオンのような才能を持っています。またイギリス北部のニューキャッスルの出身者のことを「ジョーディ」と言いますが、アンドレアはジョーディで、それならではの現実主義的というか分別のあるというか、しっかりと足を地につけている女性であり、役者として扱いにくいといったところはありませんし、そういった彼女の性質は変わらないと思います。
Q: サム・ライリーとヘレン・ミレンについては?
監督: サムはキャスティングディレクターが連れて来た役者です。彼が出演している『コントロール』 という映画を見ましたが、演技はもちろん素晴らしかったのですが、ピンキー役には合わないと思っていました。ところが彼と直接会った瞬間に、他のイギリスの若手俳優とは違うものを持っていると感じました。とってもハンサムで、カリスマ性や男臭さもあって、イギリス版アラン・ドロンといった印象を受けました。そして、ピンキー役は彼以外にはないと決意しました。1947年に初めて映画化された時にリチャード・アッテンボローが演じたピンキーと対等に張り合ってくれたと思います。彼も今後10~20年期待される俳優です。それから、ヘレンについては、脚本段階からアイダ役は彼女と決めていました。ロンドンの彼女の自宅で出演交渉したのですが、資金調達のためにも彼女が必要だったので、1週間前から、多くの資料を用意してプレゼンの準備をしました。それを見た彼女が「そこまで要求するような女優じゃないのよ」と言ってくれました。資料はすぐに鞄にしまいましたよ!
そして、本日行われたQ&Aセッションでも作品の登場人物や時代背景などについて多くの質問にお答えいただきました。
Q: ピンキーとローズの対照的な最後について、神を信じるローズに対し、尊いものを信じないピンキーに罰が与えられたということでしょうか。
監督: まず、原作者のグレアム・グリーンは、敬虔なカトリック教徒です。ですので、ローズは信仰心によって購われましたが、天国より地獄を信じるピンキーは救われなかったのだと思います。あるいは、カトリック信仰について、最後に神に許しを請えば救われるのだからどんなに罪を重ねてもいいのだという誤った解釈、腐敗した考え方をしていたのかもしれません。
Q: 日本でもモッズ文化が流行ったりしましたが、60年代の風俗の再現などは、撮影で大変だったのでしょうか?
監督: モッズファッションは英国では現在進行形です。例えば、イギリスのロックシーンでも、モッズの影響が多く窺えます。いわゆる過去の時代設定の映画作りには、特にスタジオではなく象徴的な場所で撮影を行う場合、お金がかかります。現在のブライトンは、当時のブライトンとは風景が変わってしまっています。ですから、その解決策として、撮影は主にもっと東側にあるブライトン程、変化が見られないイーストボーンという町で展開し、そして風景や背景については、278以上の視覚効果ショットを含めました。
尚、ローズ役を演じられたアンドレア・ライズボローさんは、監督のおっしゃったような「全くの別人」の様な演技で、同じくコンペティション部門の『わたしを離さないで』にも出演されています。
文豪グレアム・グリーンの名作の映画化。英国南部の行楽地ブライトンを舞台に、不良少年と純情少女の偽りの関係を軸に語られる、愛と裏切りの物語。『コントロール』で鮮烈な印象を残した主演のサム・ライリーに注目!
『ブライトン・ロック』
記者会見: 10月29日(金) 14:15~ @TIFF movie café
■ 登壇者 ローワン・ジョフィ (監督)
©2010 TIFF
冒頭の挨拶で、「東京国際映画祭は私の一番大好きな映画祭です」とおっしゃってくださったジョフィ監督。以前に一度、観光客として、東京、京都、箱根、広島を訪れ、今回の二度目の日本も満喫していらっしゃるというジョフィ監督にお話を伺いました。
Q: 有名な小説を映画化することになった経緯を教えてください。
ローワン・ジョフィ監督(以下監督): 当初、フランスのスタジオ・カナルからお話をいただきました。そして『ブライトン・ロック』のリメイク版を撮らないかと持ちかけられました。実のところ、最初は断ったんです。ここにいる多くの皆さんも同感かもしれませんが、基本的にリメイクは好きじゃないんです。でも原作の小説は本当に好きだったので、シェイクスピアの芝居が何度もリメイクされているように、別バージョンをつくるというかたちで取り組むことができるのではと考えました。
グレアム・グリーンの小説との出会いは、たぶん15歳くらいの頃だったと思いましたが、学校の授業でこの本を読みました。当時は暗くて、冷たくて、難しい本という印象を受け、あまり好きではありませんでした。スタジオ・カナルから映画の話を持ちかけられた時、本棚にあった本を手にしました。当時読んでいたもので色々と書き込まれていたものですが、しっかり読み直してみると、とても興味深いラブストーリーであることに気づきました。犯罪者と目撃者、毒のあるしかしパワフルな人間関係、とてもダークなラブストーリーです。
Q: 原作は1939年を舞台にしていますが、作品は1964年の設定になっています。もっと現代に、例えば2010年に置き換えることを考えられましたか?
監督: 脚本を書く以前には、現代を舞台にすることも考えました。壊れたレコードの代わりに傷の入ったCDを使うべきか等といった具体的な検討事項は別として、どうしても現代に置き換えにくい要素は、ローズの純粋さでした。インターネットやツイッター、ケーブルテレビが存在する現代においてローズのようなウブな箱入り娘は、現実的ではありません。
Q: そのようなローズ役の役作りについて、アンドレア・ライズボローとはどのように話し合いましたか?
監督: 彼女は、現在活躍しているあの年代で最も素晴らしい女優だと思います。アンドレアは、演じる役によって、全くの別人になることができます。おそらくこれまでにそのような才能に恵まれた女優は、メリル・ストリープだけだと思います。70年代のことでしたけど。アンドレアは、これからますます期待できる女優です。スターというわけではなく、ラブストーリーで主役を張るようなタイプの女優ではありませんが、まるでカメレオンのような才能を持っています。またイギリス北部のニューキャッスルの出身者のことを「ジョーディ」と言いますが、アンドレアはジョーディで、それならではの現実主義的というか分別のあるというか、しっかりと足を地につけている女性であり、役者として扱いにくいといったところはありませんし、そういった彼女の性質は変わらないと思います。
Q: サム・ライリーとヘレン・ミレンについては?
監督: サムはキャスティングディレクターが連れて来た役者です。彼が出演している『コントロール』 という映画を見ましたが、演技はもちろん素晴らしかったのですが、ピンキー役には合わないと思っていました。ところが彼と直接会った瞬間に、他のイギリスの若手俳優とは違うものを持っていると感じました。とってもハンサムで、カリスマ性や男臭さもあって、イギリス版アラン・ドロンといった印象を受けました。そして、ピンキー役は彼以外にはないと決意しました。1947年に初めて映画化された時にリチャード・アッテンボローが演じたピンキーと対等に張り合ってくれたと思います。彼も今後10~20年期待される俳優です。それから、ヘレンについては、脚本段階からアイダ役は彼女と決めていました。ロンドンの彼女の自宅で出演交渉したのですが、資金調達のためにも彼女が必要だったので、1週間前から、多くの資料を用意してプレゼンの準備をしました。それを見た彼女が「そこまで要求するような女優じゃないのよ」と言ってくれました。資料はすぐに鞄にしまいましたよ!
そして、本日行われたQ&Aセッションでも作品の登場人物や時代背景などについて多くの質問にお答えいただきました。
Q: ピンキーとローズの対照的な最後について、神を信じるローズに対し、尊いものを信じないピンキーに罰が与えられたということでしょうか。
監督: まず、原作者のグレアム・グリーンは、敬虔なカトリック教徒です。ですので、ローズは信仰心によって購われましたが、天国より地獄を信じるピンキーは救われなかったのだと思います。あるいは、カトリック信仰について、最後に神に許しを請えば救われるのだからどんなに罪を重ねてもいいのだという誤った解釈、腐敗した考え方をしていたのかもしれません。
Q: 日本でもモッズ文化が流行ったりしましたが、60年代の風俗の再現などは、撮影で大変だったのでしょうか?
監督: モッズファッションは英国では現在進行形です。例えば、イギリスのロックシーンでも、モッズの影響が多く窺えます。いわゆる過去の時代設定の映画作りには、特にスタジオではなく象徴的な場所で撮影を行う場合、お金がかかります。現在のブライトンは、当時のブライトンとは風景が変わってしまっています。ですから、その解決策として、撮影は主にもっと東側にあるブライトン程、変化が見られないイーストボーンという町で展開し、そして風景や背景については、278以上の視覚効果ショットを含めました。
尚、ローズ役を演じられたアンドレア・ライズボローさんは、監督のおっしゃったような「全くの別人」の様な演技で、同じくコンペティション部門の『わたしを離さないで』にも出演されています。
文豪グレアム・グリーンの名作の映画化。英国南部の行楽地ブライトンを舞台に、不良少年と純情少女の偽りの関係を軸に語られる、愛と裏切りの物語。『コントロール』で鮮烈な印象を残した主演のサム・ライリーに注目!
『ブライトン・ロック』