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2010.10.26
[インタビュー]
アジアの風『ジュリエット』ホウ・チーラン(侯季然)監督インタビュー(10/26)

『ジュリエット』ホウ・チーラン(侯季然)監督

台湾・金馬影展(映画祭)でのオープニング上映に先がけて、東京国際映画祭でワールドプレミア上映された全3話からなるオムニバス映画『ジュリエット』。『熱帯魚』(95)、『ラブゴーゴー』(97)のチェン・ユーシュン監督13年ぶりの復帰作としても話題の1本だ。この作品で、第1話『ジュリエットの選択』を演出した期待の新鋭=ホウ・チーラン監督に話をきいた。
©2010 TIFF

――今回の『ジュリエット』、観客の期待は「チェン・ユーシュン監督の復活」にあったと思うんですが、それを上まわるほどに、監督の担当された第1話は素晴らしかったです。この作品は、昨年の東京国際映画祭で上映されたチェン・ヨウチェ監督の『ヤンヤン』(09)同様、アン・リー&リー・ガン兄弟による台湾若手監督支援プロジェクト“推手計畫”の1本とお聞きしていますが、企画成立の経緯を教えてください。

2007年のことなんですが、アン・リー監督がハリウッドから脚本家を招いて、台湾の若手監督向けにワークショップを開催するという計画があったんですね。そこで6本の短編脚本を完成させ、ゆくゆくはそれを映画化し・・・という予定だったのですが、いろいろありましてワークショップの計画自体が頓挫してしまったんです。それを残念に思ったリー・ガンさんが、既に提出されていた6本の企画の中から3本を選び出し、“推手計畫”の枠の中でオムニバス映画として製作をすることになった、というのがそのはじまりです。当初は3本の短編には共通のテーマが設定されておらず、タイトルも『上上』とつけられていました。後に、『ロミオとジュリエット』という共通のモチーフが決まって、タイトルが『ジュリエット』に変更されたのです。

――『ジュリエット』の第1話『ジュリエットの選択』は、70年代の台湾を舞台にした悲恋のドラマです。あなたは年齢的に、あの時代をリアルタイムで体験していないと思いますが、なぜ70年代をチョイスしたのですか?

僕は以前から、台湾の70年代にとても興味があったんです。もちろん、実際に体験をしたわけではないのですが、いろいろと調べていくうちに、あの時代のもつ雰囲気に惹かれてしまって。当時の台湾はまだ戒厳令下にありましたが、50~60年代の白色テロの時代に比べると、だんだんと氷が溶けるようにゆるやかになってきて、いろいろな文化活動が勃興したり、情報管制もゆるやかになり社会全体が平和な雰囲気に包まれていったんですね。子供の成長で例えるならば、台湾が大人への階段を上りつつある時期が70年代であったと思います。
©2010 TIFF

――70年代といえば、05年の東京国際映画祭でも上映された、ホウ監督の前作『台湾黒電影』(05)のモチーフとなった実録・犯罪映画の数々も70年代末頃から量産されていますね。

その通りです。お話しましたように、僕がとくに70年代に興味があるのは間違いないのですが、その時代以外でも、映画の背景となった時代をあらわすさまざまな事象を、自分の作品の中に盛り込んでいきたいと僕は考えています。例えば、僕のもう1本の長編劇映画『有一天』(10)は、現在の台湾を舞台にした若い男女のラヴストーリーなんですが、この作品では“徴兵制”という、現代の恋人たちが必ず直面するハードルが重要なキーワードとなっています。

――『ジュリエット』のキャスティングについてお話を聞かせてください。ビビアン・スーの熱演が、すこぶる評判がいいですね。彼女を起用した理由は?

ビビアンのマス・イメージというのは、台湾でも日本でも同様に「天真爛漫で可愛い」というものだと思いますが、実はそれだけではなくて、内面には強い意志や、複雑で深いものが存在しているんです。僕は、そのようなあまり注目されていない彼女の部分にフォーカスをあてたいと思いました。

――その狙いは大成功だったと思います。ビビアンも素晴らしいのですが、その相手役に『九月に降る風』(08)や『ボディガード&アサシンズ(十月圍城)』(09)で注目の若手俳優=ワン・ボーチエを配したというのも絶妙でした。

『ロミオとジュリエット』ではジュリエットの方が年上という設定でしたので、あえて若いワン・ボーチエを起用したのです。2人の年齢差は15歳なんですが、とてもいいバランスでしたよね。

(聞き手:杉山亮一)


『ジュリエット』
©Khan Entertainment Co., LTD.



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