コンペティション
知らない世界を紹介してくれること。知らない時代を見せてくれること。知らない気持ちを感じさせてくれること。普遍性を持った「物語」を媒介にして、これらの未知の領域を発見させてくれること。それが映画の興奮であり、醍醐味です。情報過多で濁ってしまった視界を晴らし、世界を見つめ直す「驚き」と「発見」を与えてくれることが今年のコンペのカギとなりました。
我々はイランの高原の幽玄な景色を知らないし、軍事政権下のアルゼンチンで暮らす市民感情を知らないし、フランス警察に迫害されるフランスのユダヤ人の状況ももちろん知らない。これらはほんの一例に過ぎず、ある時は斬新な切り口に驚き、ある時は思いもよらなかった感情を発見することになるラインナップです。
若手の監督達による大胆な世界観に満ちた作品をワールドプレミアで紹介する一方、有名な原作を大きなスケールで映画化した作品を複数ご紹介できるのも今年の特徴です。
第23回東京国際映画祭 コンペティション プログラミング・ディレクター
矢田部吉彦
特別招待作品
特別招待作品は、今後公開される話題作をいち早く紹介する部門です。
今年は、オープニングにデヴィッド・フィンチャー監督作品「ソーシャル・ネットワーク」、クロージングにベン・アフレック監督作品「ザ・タウン」と、ハリウッドにおけるハイクオリティな作品をそろえることが出来ました。また、昨年の「アバター」に続き、「トロン・レガシー3D」の未公開フッテージ上映もプレミア上映となります。その他の作品も、邦洋とりまぜて、実に楽しいラインアップとなりました。今、話題の3D作品も4本あります。これら、さまざまな作品群を東京国際映画祭の場で、是非、ご堪能下さい。
第23回東京国際映画祭 特別招待作品 プログラミング・ディレクター
都島信成
アジアの風
今年の「アジアの風」には、寺院の山門を守護する一対の仁王像のごとき2人の巨人――生誕100年の黒澤明と、生誕70年のブルース・リー――にちなんだ2つの記念特集を筆頭に、注目のプログラムが並びます。東は韓国・中国から、西はトルコ・イスラエルまでの広大な地域の新作を紹介する「アジア中東パノラマ」。台頭が際立つ台湾の新世代作品を集めた「台湾電影ルネッサンス2010」、中東の映画大国を代表する鬼才の全貌を紹介する「躍進トルコ映画の旗手レハ・エルデム監督全集」――。“より広く!より深く!”を合言葉に、アジアの風はますます吹きまくります。
第23回東京国際映画祭 アジアの風 プログラミング・ディレクター
石坂健治
日本映画・ある視点
昨年から「日本映画・ある視点」は、日本のインディペンデント映画を応援しようという傾向を強めてきましたが、今年もその路線は継続します。
まずは、遡れば岩波映画出身であり、自主映画の大先輩である東陽一監督作品が部門のオープニング作品として登場。そして、すずきじゅんいち監督や田中千世子監督たちの渾身のドキュメンタリー作品、今作が長編デビュー作となる瀬田なつき監督、軽妙なセンスが注目される深田晃司監督、役者から極限のエネルギーを引き出した橋本直樹監督、そして海外からも注目を浴びる若手作家である廣末哲万監督による作品が、部門を熱くします。
これらに加え、今年はぴあフィルムフェスティバル(PFF)との提携を深め、PFFグランプリ受賞作品を特別上映しつつ、PFFの果たしている役割や、インディペンデント映画と映画祭の関わり方を議論するシンポジウムなどを企画していきます。さらに充実していく「日本映画・ある視点」にご注目を!
WORLD CINEMA
今年のサンダンス、ロッテルダム、ベルリン、カンヌ、ヴェネチアなどの国際映画祭で話題になった作品や、有名監督の新作で、原則として日本公開が2010年8月末現在で決定していない作品を集めたのがこの部門です。各映画祭の受賞作品や、個性派監督のドキュメンタリー、あるいは有名俳優の監督デビュー作など、映画ファンであれば見逃せない作品が揃っています。昨年の[WORLD CINEMA]で上映された作品の多くが、その後日本配給を決めています。日本の洋画配給の観点からも重要な部門に成長している[WORLD CINEMA]、今年もご期待下さい。
natural TIFF supported by TOYOTA
[natural TIFF]も今年で3年目。「自然と人間との共生」を広い意味でテーマとする作品を集めてきましたが、今年はさらに興味深く、面白い作品を選びました。天敵のいない外来生物の脅威をユーモアたっぷりに描くドキュメントや美少女とゾウのロードムービー(名作『脱走山脈』を思わせる!)カンヌやヴェネチアで話題の作品もセレクト。ご期待ください。