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2010.10.30
[イベントレポート]
10/30(土)コンペティション 『わたしを離さないで』 公式記者会見+Q&Aのご報告

『わたしを離さないで』 公式記者会見+Q&Aのご報告

■記者会見:10月30日(土) 14:50~ @TIFF movie café
Q&A:10月30日(土) 16:15~  @TOHOシネマズ 六本木ヒルズ Screen7
■登壇者:マーク・ロマネク(監督)
©2010 TIFF


マーク・ロマネク監督(以下、監督): コンニチワ!お集まりいただいてありがとうございます!

Q: 美しい感動作を東京国際映画祭に持ってきてくださってありがとうございます。今日はあいにくの天気ですが、東京のご感想は?

監督: 東京を訪れるのは今回が初めてですが、色々な意味でドキドキしています。まだ仕事ばかりで、ゆっくりと東京を楽しむことができていませんが、でも是非帰国する前に時間をつくって見て回りたいと思います。

Q: キャリー・マリガン、アンドリュー・ガーフィールド、キーラ・ナイトレイ、この3人のアンサンブルが素晴らしかったです。中でもキャリー・マリガンですが、役より若いのに起用した理由、それから子役たちが似ていると感じたのですが、どのようにキャスティングされたのですか?

監督: まずはキャシー役を決めなければと思い、一生懸命探しました。サンダンス・フィルム・フェスティバルに参加していたスタジオの人が、キャリーの出演している映画を見た後、興奮気味に「この女優に会って欲しい!」と言ってきました。さっそくオーディションしましたが、文句無しの出来栄えでした。まず彼女を決めて、その他の登場人物、そして子役のキャスティングをしました。
子役については、もちろん演技力は必要ですが、ちゃんと登場人物の子ども時代の役なのだということがわかるようにしようと気を使いました。多くの映画では、全く似ていない子どもが起用されていることが少なくありませんからね。優秀なキャスティングディレクターであるケイト・ダウドが何千人もの子ども達の中から、探し出してくれました。私としては、プロの子役にはあまり興味がありませんでした。感動するような演技をしているところをあまり見たことなかったので。ケイトは色々な学校を訪問し、各役の候補を40名程に絞り込んでくれました。
子ども時代のトミー役のチャーリーはテレビコマーシャルに出演したことがあり、子ども時代のルースを演じたエラはロンドンのウェストエンドで公演された芝居「オリバー」でエキストラの経験があります。それぞれそれが唯一の経験です。そして、驚くことにキャシーの子ども時代を演じたイジーは、全く経験がなかったんです。

Q: 原作者でありプロデューサーでもあるカジオ・イシグロさんは、このプロジェクトにどのように関わったのでしょうか?

監督: 彼は、プロジェクトに協力してくれた「愛情に満ちた伯父さん」のような存在です。とても親切に、また、信頼感をもって接してくださって、自由に映画を制作させてくれました。そして必要な時はいつでも手を差し伸べてくださいました。脚本についても、ちょっとしたコメントをくれて、そして認めてもらえて、嬉しかったですよ。私のことも認めてくれましたしね。たまに撮影現場に顔だしてくれましたが、それはとても特別なことのように感じました。それでますますやる気や元気が出てきましたしね。初めて何カットか見てもらった時は緊張して、どう思われるか恐ろしいくらいの気持ちでした。でも彼は映画を気に入ってくださって、そして愛情を注いでくださいました。本当に良かったです。

Q: 久しぶりに監督する長編映画だと思いますが、原作のどのようなところに魅かれ、何故これを映画にしようと思ったのでしょうか?

監督: カズオ・イシグロさんは大好きな作家で、彼の本は全部読んでいます。この本を最初に読んだ時、エンディングでは涙しましたし、ずっとこの本のことが頭から離れませんでした。それは私だけではなく、この本を読んだ多くの人に共通した意見だと思います。二度目に読んだ時、この本を映画として頭の中で描いている自分に気付きました。そこで、既に誰かが着手して、映画化の権利を取得しているのかどうか調べたところ、DNAフィルムズとアレックス・ガーランド(脚本)、フォックス・サーチライト社が企画しているということを知り、監督候補として役者のようにオーディションを受けました。この映画をやりたいという監督が大勢いましたからね。原作の魅力については、物語自体と、それから非常に独創的でちょっと奇妙なコンセプト、この両方にものすごく惹かれました。イシグロさんのような方の本を映画化できるなんていうことは、絶対に逃すことのできない大きな機会です。
©2010 TIFF

また、記者会見に次いで開催されたQ&Aセッションでは、この映画がラブ・ストーリーであることについてお話しくださいました。

Q: 最後の方で浜辺にボートがありますが、これは何を象徴しているのでしょうか。

監督: 象徴ということにおいてはあまり自分の考えを押しつけたくありませんので、あえて答えないでおきます。作品全体を通して、皆さんには自由に解釈してほしいと思っています。また、イシグロさんは、象徴を使うのは好きでなく、本能的に感じてほしいという考え方をしているはずです。

Q: 非常に考えさせられる映画でした。映画の中に臓器提供の話が出てきましたが、これについてどのような考えを持っていらっしゃいますか?

監督: 考えさせられたということで嬉しく思いますが、実はそれよりも感じてらえることを願っています。私は実のところ、バイオテクノロジーや臓器提供の道徳観についてあまり興味はありません。SF的な要素というものは、イシグロさんも原作の中では比喩的に使っていて、「短い命」という設定がしたかったんだと思います。何よりも、私が描きたかったのはラブ・ストーリーなんです。

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