石井裕也監督の『川の底からこんにちは』や『君と歩こう』などを見て、新しい日本の才能を発見した!と嬉しくなった方は多いのではないでしょうか?うなずいているそこのあなた!『歓待』を決して見逃してはいけません。深田晃司監督は、間違いなくこれから世界が認めることになる才能です。
実際に、前作『東京人間喜劇』が去年のローマ国際映画祭に招待され、その作風が大人の恋模様を軽やかなタッチで描くことを得意としたフランスの巨匠、エリック・ロメール監督を彷彿されると評されました。また、『ざくろ屋敷』という作品で、パリで行われた日本映画祭(KINOTAYO映画祭2008)で見事新人賞に輝いています。
久々に登場した、豊富な映画知識を持つ「シネフィル系」の監督。ロメールの世界からうってかわって、『歓待』は成瀬巳喜男や小津安二郎といった日本のビッグネームが想起される世界です。町の小さな印刷屋さんで繰り広げられる小騒動を、抜群のユーモアセンスで描いていきます。堅実に経営を進める夫婦のもとに現れる、「招かれざる客」。その客が小さな嵐となって、平穏であった日常がどんどん混乱していくのですが、小市民の暮らしにグローバルなテーマが混じったりして、本当に一筋縄ではいかない作品です。
ゲラゲラ笑いながら、いやあ上手いなあ、と唸ってしまう100分間。見て自慢するか、見逃して後悔するか、全てはあなた次第!
プログラミング・ディレクター 矢田部吉彦
歓待 hospitalité
今年の映画祭、特にコンペは、ちょっとマジメな作品が多いかもしれません。もう少し肩の力を抜いて、気楽に見たいなあという方にお勧めなのが『小学校!』です。タイトルの通り、小学校を舞台にしたドラマのような、ドキュメンタリーのような、とにかく溢れんばかりの子供たちの魅力で一杯の作品です。
監督は、実際に学校の先生でもあり、映画に出てくるエピソードはどれも実体験に基づいたもののようです。それだけに、全ての描写がとてもリアル。教室の授業のシーンでも、これだけナチュラルな子供の表情を撮れるのは、コツをわきまえた先生ならではなのだろうな、と思わされます。また、一見愉快ではあるのですが、どのエピソードも子供の心の奥底に触れるものであり、監督の真摯な姿勢が伺えます。
また、子供たちだけでなく、「事件は職員室でも起こっている!」といわんばかりの大人の世界の描写も充実しています。偏屈な同僚や、保守的な上司に囲まれて奮闘する主人公(新任美術教師)の戸惑い振りもとても楽しいです。
そして、3年連続で映画を撮っているだけあり、映画監督としての腕も確か。小さなエピソードを集積して、最後に感動的なクライマックスを用意し、そして穏やかなエンディングへと進んでいくという、若い人のお手本になりそうな、鮮やかな映画の作り方にも注目です。
子供たちの笑顔でハッピーになりながら、映画の楽しみも堪能してもらえる1本です。
小学校! Primary!
ハッピー・ポエット The Happy Poet
ゾウとアタシに雪が降る 同時上映:Wake up!! TAMALA The Elephant Simultaneous Screening : Wake up!! TAMALA
シュレック フォーエバー Shrek Forever After
ラン・フォー・マネー Run for Money