この物語をどう説明したらよいのでしょう。とても不思議な展開です。どうやら、舞台はイランの山奥の小さな村のようです。でも、ただの村ではない?何故か、刑事らしき男が、年に1回、村人がそこにいるかどうかの「出欠をとる」シーンから映画は始まります。そして、そんな不思議な村での人々の生活が描かれていきますが、中心になるのが、禁止されているフラミンゴ猟にとりつかれた男。そして、彼と相思相愛の若い女性がいて、その二人の関係に横槍を入れてくる、やっかい者の男がいます。明らかにフラれているのに、やっかい者は、どうしても彼女に対する想いを諦めきれない…。
どんな世界にも共通する三角関係が、極めて幻想的な風景の中で語られていきます。まるで、おとぎ話のようでもあります。とにかく、村や、河や、その周辺の山々がとんでもなく美しいのです。映画館の大画面で見たら、思わずため息が漏れるに違いありません。壮大な真っ白の雪景色に、ピンクのフラミンゴ…。イメージが広がりませんか?
幻想的で寓話的なイメージの一方で、村の歌や踊りのシーンがとても楽しく、本当にその地で行われているお祭りのようにリアルです。ファンタジーのような側面と、そんなリアルな側面とが融合しているところがこの作品の魅力の一つかもしれません。
まだ若いイランの新人監督による独特な映像美を、「発見」してみませんか?
プログラミング・ディレクター 矢田部吉彦
フラミンゴ No.13 Flamingo No.13
この監督、控えめに言って、天才です!イタリアの30代の俊英監督ですが、独特の世界観の構築がすごい!
といきなり興奮して紹介していますが、今年の映画祭の全作品の中でも、最高の1本だと思っています。イタリアで大ベストセラーとなった原作の映画化ですが、イタリア人にとってはちょうど『ノルウェイの森』が映画化されたのと似ている感覚かもしれません。日本でも翻訳本が出ていますが、読んでから見るもよし、見てから読むのもよしで、原作も映画も素晴らしい出来栄えです。
アリーチェとマッテアは、それぞれ幼い時の事件が原因で、心と体に傷を負っています。二人は高校時代に出会い、それから長い年月をかけて、二人にしか理解できない特殊で親密な関係を築いていきます。それが愛情となっていくのか、それとも…、という物語。
幼少時代、高校時代、大人になってからの時代、この3つの時代を映画は自由に行き来して、二人のトラウマの原因が何なのか、そして二人の関係の行方を追っていきます。
ともかく、地球上にこの二人しか住んでいないような、現実離れしたパラレル・ワールドのような、徹底して二人の目線でのみ語られる独自の世界の構築が素晴らしいです。約2時間、一瞬たりとも緊張感が途切れることがなく、我々は彼らの心に入りこみ、二人の世界の虜になってしまいます。
大人になってからのアリーチェを演じるアルバ・ロルヴァケルは、現在のイタリアの若手を代表する女優です。上手く形容できませんが、若き日のロバート・デニーロのような天才性が溢れ出る役者です。そして、音楽の使い方や、3つの時代を自由に繋ぐ編集も完璧。
もしかしたら、この映画が、「私の人生を変えた1本」になる人も出てくるのではないかと密かに思っています。映画祭後の日本公開は未定です。本当に、見逃さないで下さい!
素数たちの孤独 The Solitude of Prime Numbers
ブッダ・マウンテン Buddha Mountain前売鑑賞券10/16(土)発売!
パリから5時間 Five Hours from Paris
ラーヴァン Raavan
愛に関するすべてのこと All About Love