TIFF Newsletter 10 月 14 日号
TIFF Newsletter 「アジアの風」特別編
プログラミング・ディレクターによる「アジアの風」特別編、第2弾は躍進トルコ映画の旗手 レハ・エルデム監督全集特集!
もちろん監督ご本人も東京国際映画祭に来場予定です。Q&Aで直接質問できるチャンスに賭けて、作品について予習をしてみましょう!
(ゲストの登壇スケジュールは変更になる場合がございます。ご了承ください。)
チケットのお買い求めはお早めに!
※このメールは、「アジアの風」部門に興味があるとお答えの方に、お送りしております。
世界が注目!トルコ映画
世界が注目するトルコ映画!
その中核を担うレハ・エルデム監督全集は見逃せない!
レハ・エルデム監督レハ・エルデム監督

トルコ映画が元気だ。ここ10年ほどで国産映画の製作数が増加し(03年18本→09年69本)、市場シェア50%に乗せる国内の好況が、各地の国際映画祭での高評価にも結びついているのだ。振り返ると、1990年代から『カサバ―町』(97/TIFF98東京シルバー賞)、『スリー・モンキーズ』(08/カンヌ08監督賞、TIFF08で上映)のヌル・ビルゲ・ジェイランらが活躍してきたが、今年のベルリン国際映画祭でセミヒ・カプランオウルの『蜂蜜』(10)が金熊賞を受賞。カプランオウル監督にとっては、前2作の『卵』(07)、『ミルク』(08)と併せた三部作が完結した。これらの作家たちはヨーロッパの芸術映画に通じるような静謐なタッチが持ち味で、自身の幼児期の記憶に基づいた映像表現を得意としている点も共通している。

TIFFアジアの風でも近年はトルコ映画の受賞がめだつ。一昨年の最優秀アジア映画賞『私のマーロンとブランド』(08)、昨年のスペシャル・メンション『私は太陽を見た』(09)はいずれもトルコ国内のクルド人を主人公に据えた力作で、前者はビデオレターで連絡を取りながら国境を超えて結ばれようとする恋人たちの物語、後者は村を追われて遠くノルウェーの地まで流れていく難民たちの大河ドラマだった。

今年のアジアの風で全作品を紹介するレハ・エルデムは、こうしたトルコ映画の活況を支える中核のひとりであり、また一作ごとに変貌を遂げるその作風がひときわ異彩を放つ作家でもある。

(石坂健治)

エルデムの前期3作
ファンタジーとコメディが満載――エルデムの前期3作のなかの『ラン・フォー・マネー』

『月よ』
『月よ』

『ラン・フォー・マネー』
『ラン・フォー・マネー』

『ママ、こわいよ』
『ママ、こわいよ』

レハ・エルデムは今年50歳。これまで6本の長編を撮っているが、前期3作と後期3作の間に補助線を引いてみると、その全貌が把握しやすくなるかもしれない。

20代のデビュー作『月よ』は不在の母をめぐる孤独な少女のファンタジーで、このテーマはのちに『マイ・オンリー・サンシャイン』でグレード・アップされることになる。その後の長い沈黙を経て映画界に復帰した『ラン・フォー・マネー』『ママ、こわいよ』はバルザック的な群像悲喜劇といった小市民ドラマで、後期3作のようなスケール感はないが、トラブルに遭遇した庶民のドタバタから、人間存在の愚かさや不条理が浮かび上がってくる。

TIFF00コンペティション出品の『ラン・フォー・マネー』は、予期せぬ大金を手にしてしまった実直なシャツ職人が人生を踏み外していく、笑うに笑えない「コメディ」である。実は多くのエルデム作品は美しいボスポラス海峡のほとりで展開され、東洋と西洋をつなぐこの有名な海峡こそエルデム作品の一大シンボルなのだが、本作ではカネを死守する主人公、カネを落とした男、カネを狙う強盗の3者が、海峡の通勤フェリーの甲板で追いつ追われつ入り乱れるうち、誰が誰を追っているのかが曖昧になっていく。この不条理感がエルデム作品の大きな魅力だ。

(石坂健治)

上映時間
10/25 17:10- TOHOシネマズ 六本木ヒルズ Screen3 (Q&A予定) チケットぴあ ローソンチケット
10/28 12:00- シネマート六本木 スクリーン4 チケットぴあ ローソンチケット
10/27 16:40- TOHOシネマズ 六本木ヒルズ Screen3 チケットぴあ ローソンチケット
10/30 15:10- シネマート六本木 スクリーン4 前売鑑賞券完売 ローソンチケット
10/25 20:05- TOHOシネマズ 六本木ヒルズ Screen3 (Q&A予定) 前売鑑賞券完売 ローソンチケット
10/28 15:00- シネマート六本木 スクリーン4 チケットぴあ ローソンチケット
※完売表示が無い場合も前売鑑賞券は売切れの場合がございます。ご了承ください。
エルデムの後期3作
荒唐無稽なイメージの飛躍――『コスモス』にいたる後期3作とともにエルデムは新たなステージに突入した!

『時間と風』
『時間と風』

『マイ・オンリー・サンシャイン』
『マイ・オンリー・サンシャイン』

『コスモス』
『コスモス』

レハ・エルデムの作風が飛躍を遂げるのは、第4作『時間と風』がポイントとなる。TIFF07でこの映像詩を目にした観客は軽い驚きを感じたものだった。それまでのイスタンブール庶民ドラマと異なり、風光明媚な地方の寒村を舞台に、3人の子どもがいちおうの主人公として登場するものの、彼らはいわば狂言回しで、真の主役は1日5回のアザーム(イスラームの祈り)によって分割され、日々繰り返されていく「時間」そのものなのだ。かといって難解な実験映画ではなく、村人たちの四季の生活がゆったりと描かれていく、そのリズムは実に心地よい。さらに特筆すべきはエストニアの作曲家アルヴォ・ペルトによる、アザームの鐘をイメージしたという重厚なオリジナル音楽。目と耳の両者に圧倒的に訴えかける『時間と風』はエルデムの大きな飛躍を示していた。

このあたりからエルデム作品のスケール・アップが世界的にも注目されるようになっていく。続く『マイ・オンリー・サンシャイン』は、母が不在で愛のない父子家庭に暮らす少女の物語で、テーマとしてはデビュー作『月よ』と共通するものがあるが、無口な少女がどこまで過酷な状況に耐えていくのか息を呑んで見守っているうち、パンク的とでも呼びたくなるイメージの飛翔の瞬間が訪れる。これは必見だ。エルデム的アイコンのボスポラス海峡も久々に登場。

そして最新作『コスモス』。見知らぬ男が村に到来して次々と超常的な奇蹟を巻き起こす。コスモス(宇宙、秩序)と名のる男は果たして神なのか悪魔なのか。さまざまな謎を抱えたまま物語は進んでいくが、その荒唐無稽なイメージの連鎖にめまいをおぼえる人が続出するのではないだろうか。新しいステージに突入しつつあるエルデムの現在を総括する本特集に乞うご期待!

(石坂健治)

上映時間
10/26 16:50- TOHOシネマズ 六本木ヒルズ Screen3 チケットぴあ ローソンチケット
10/29 15:00- シネマート六本木 スクリーン4 チケットぴあ ローソンチケット
10/26 19:55- TOHOシネマズ 六本木ヒルズ Screen3 (Q&A予定) 前売鑑賞券完売
10/29 18:45- シネマート六本木 スクリーン4 チケットぴあ ローソンチケット
10/27 20:10- TOHOシネマズ 六本木ヒルズ Screen3 (Q&A予定) 前売鑑賞券完売
10/30 18:10- シネマート六本木 スクリーン4 前売鑑賞券完売
※完売表示が無い場合も前売鑑賞券は売切れの場合がございます。ご了承ください。
第23回TIFFにどうぞご期待ください!
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