TIFF Newsletter 10 月 8 日号
TIFF Newsletter 「アジアの風」特別編
今年も選りすぐりの作品をバラエティ豊かに取り揃えたアジアの風部門より「アジア中東パノラマ」を地域別にご紹介。
「面白そうだけど、沢山あって何を見たらいいか分からない!」という方必読!
アジアの風プログラミング・ディレクター自らがあなたの作品選びにも一役買わせていただきます!
※このメールは、「アジアの風」部門に興味があるとお答えの方に、お送りしております。
東アジア編
脱力系のユルい魅力が満載!――韓国インディーズの傑作『虹』と、パン・ホーチョン監督の『恋の紫煙』
『虹』
(c)JUNEFILM
韓国映画といえば、大規模なブロックバスターか韓流スターもの、というイメージを持つ人が多いかもしれないが、低予算のインディーズ作品にも面白いものが沢山あるのをご存知だろうか。TIFF08で上映した『銀河解放戦線』もそうだったが、冴えないインディー映画人の冴えない日常を、半ば自嘲気味、半ば強い矜持とともに描いた作品に独特のユルい魅力があるのだ。脱力系インディーズと名づけたい。今年の全州国際映画祭で韓国映画部門のグランプリに輝いたシン・スウォン『虹』はその系譜に連なる傑作である。売れない女性映画監督(のタマゴ)のジワンは挫折の連続でくさっているが、息子から「お母さんの映画に“通行人その3”の役で出たい」と励まされて一念発起、映画界への再チャレンジが始まる…(英語タイトルの「Passerby #3」は息子のこのセリフから取っている)。困難を乗り越えた果てに春は訪れるのか。ブロックバスター超大作とはひと味違う「小さな映画」の愛すべきテイストを堪能できる1本。
『恋の紫煙』
(c)2010 Media Asia Films (BVI) Ltd.
アジアの風の人気者、パン・ホーチョン監督が2年ぶりに来日するのを待ち焦がれているファンも多いだろう。その喫煙映画=『恋の紫煙』はまさにユルい魅力でむせ返るほどの新作だ。愛煙家には窮屈な昨今だが、屋外喫煙所でスモーカーたちの馬鹿話が繰り返されるなか、大人の恋が静かに花開いていくあたりの展開にパン監督の成熟がうかがえる。当たり前だが、タバコを吸わない方にもおススメの1本!

(石坂健治)

上映時間

アジアの風 アジア中東パノラマ

虹 Passerby #3

10/23 18:10 シネマート六本木スクリーン1 チケットぴあ ローソンチケット
10/26 10:45 TOHOシネマズ 六本木ヒルズScreen2 チケットぴあ ローソンチケット

アジアの風 アジア中東パノラマ

恋の紫煙 Love in a Puff

10/25 16:40 TOHOシネマズ 六本木ヒルズScreen2 チケットぴあ ローソンチケット
10/28 16:35 TOHOシネマズ 六本木ヒルズScreen5 チケットぴあ ローソンチケット
東南アジア編
デジタルならではの「機動性」と「日常のディテール描写力」を活かしたマレーシア&シンガポール作品――『タイガー・ファクトリー』『赤とんぼ』『燃え上がる木の記憶』
今年の東南アジアはデジタル作品が大半を占めるが、どれも実験意欲旺盛で、ひと昔前の「デジタル=低予算」というだけの単純なイメージには収まらない。「機動性」と「日常のディテール描写力」に優れるデジタル機材の特質を積極的に活用したものばかりで、思わず「映画の未来が見える!」と言いたくなる。
『タイガー・ファクトリー』
(c)Greenlight Pictures
(c)Kohei Ando Laboratory
カンヌの監督週間でも話題を呼んだ『タイガー・ファクトリー』と『インハレーション(短編)』のマレーシア新潮2本立ては、ウー・ミンジンとエドモンド・ヨウの若手コンビが監督と製作を交替して撮り上げた姉妹編で、夢の日本行きを計画しながら闇社会にはまっていく少女AとBがそれぞれの主人公。説明的なシーンを排しながらも全編が大きな川の流れのように収斂していくさまは圧巻だ。いまや多くの日本映画のクレジットにその名を刻む早稲田大学安藤紘平研究室が共同製作。というのもヨウは安藤ゼミに留学中の大学院生なのだ。
『赤とんぼ』 シンガポール版『スタンド・バイ・ミー』の雰囲気もある『赤とんぼ』は、26歳の女性が高校時代の小さな冒険を回顧する、胸がキュンとなる青春の残照の物語。すでに全州国際映画祭審査員特別賞をはじめ各地で受賞を重ねている。1984年生まれのリャオ・チエカイは、今年のアジアの風で最年少の監督だ。26歳とは若い!
『燃え上がる木の記憶』 タンザニアに遠征して撮ったシャーマン・オン(マレーシア)の異色作『燃え上がる木の記憶』は、ロッテルダム国際映画祭の製作による「アフリカ・プロジェクト」の一本で、オンは「ロードムービーというジャンルへのオマージュ作品」と語っている。TIFF選定スタッフのなかには本作を観るや「ペドロ・コスタと比較したくなる作家」と興奮している者もいて、とにかく目が離せない1本だ。

(石坂健治)

上映時間
10/26 21:25 TOHOシネマズ 六本木ヒルズScreen2 チケットぴあ ローソンチケット
10/28 20:15 シネマート六本木スクリーン1 チケットぴあ ローソンチケット

アジアの風 アジア中東パノラマ

赤とんぼ Red Dragonflies

10/26 11:00 TOHOシネマズ 六本木ヒルズScreen1 チケットぴあ ローソンチケット
10/29 19:50 シネマート六本木スクリーン1 チケットぴあ ローソンチケット

アジアの風 アジア中東パノラマ

燃え上がる木の記憶 Memories of a Burning Tree

10/23 12:00 シネマート六本木スクリーン1 チケットぴあ ローソンチケット
10/26 16:15 TOHOシネマズ 六本木ヒルズScreen2 チケットぴあ ローソンチケット
中東・中央アジア編
アジアの風は広く!深く!――イランの等身大の若者像『ドッグ・スウェット』、ウズベキスタンから重厚で神秘的な『追伸』
『ドッグ・スウェット』
(c)Deluxe Art Films
イラン映画に何かが起こっている。心温まる児童映画、ではない何かが。それを強く感じたのは、テヘランのアンダーグラウンド・ロック・シーンを描いたバフマン・ゴバディ『ペルシャ猫を誰も知らない』だった。この9月にアジアフォーカス・福岡国際映画祭で観たグラナーズ・ムサウィー『私のテヘラン』はさらに強烈で、アングラ演劇、酒、音楽、マリファナ、HIV感染、違法ダンスパーティーといった首都の裏面が、閉塞した社会を脱出してオーストラリア移住を試みる女性の行動と並行して描かれていた。アジアの風で上映する『ドッグ・スウェット』のタッチはもう少し穏やかだが、やはりテヘランの若者6人に焦点を当てている。既婚者と恋に落ちるフェミニスト、見合い結婚を強いられる同性愛者、差別に苦しむ女性ポップス歌手など、ジェンダーの問題を折り込みながら、現代イランのリアルな若者像を浮かび上がらせている。ちなみにドッグ・スウェット(犬の汗)とは家で作られる密造酒を示すスラングとの由。イラン映画に何が起こっているのかを見きわめる機会だ。
『追伸』
(c)National Cinema Agency "Uzbekkino"
久々のウズベキスタン映画『追伸』は、田舎の電気修理工の男が落雷に打たれ、啓示を受けたかのように徐々に変身していく物語。周囲からは精神に異常を来たしたとしか見えないのだが、男にとっては世界が大きな謎として迫ってきたため、単身その謎と対峙しているという認識なのだ。このズレがやがて大きな事件を巻き起こし…。ラストまで息を詰めて見入ってしまう重厚で神秘的な1本。ヤルキン・トゥイチエフ監督は、ギリシャ神話、聖書からモーツァルト、タルコフスキーまでのイコンを重層的に折り込んで観客に提示している。

(石坂健治)

上映時間

アジアの風 アジア中東パノラマ

ドッグ・スウェット Dog Sweat

10/24 14:15 TOHOシネマズ 六本木ヒルズ Screen1 チケットぴあ ローソンチケット
10/27 16:30 シネマート六本木 スクリーン1 チケットぴあ ローソンチケット

アジアの風 アジア中東パノラマ

追伸 P.S

10/24 17:00 TOHOシネマズ 六本木ヒルズ Screen6 チケットぴあ ローソンチケット
10/28 20:40 TOHOシネマズ 六本木ヒルズ Screen3 チケットぴあ ローソンチケット
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『パリから5時間』

パリから5時間  イスラエル

10/27 10:50 TOHOシネマズ 六本木ヒルズ Screen5
チケットぴあ ローソンチケット
10/29 20:30 TOHOシネマズ 六本木ヒルズ Screen3
チケットぴあ ローソンチケット
『海の道』
(c)Los Peliculas Linterna Studio

海の道  フィリピン

10/26 18:55 TOHOシネマズ 六本木ヒルズ Screen2
チケットぴあ ローソンチケット
10/29 16:20 シネマート六本木 スクリーン1
チケットぴあ ローソンチケット
『ハイソ』
(c)Pop Pictures Co.,Ltd

ハイソ  タイ

10/24 19:00 TOHOシネマズ 六本木ヒルズ Screen3
チケットぴあ ローソンチケット
10/28 10:40 TOHOシネマズ 六本木ヒルズ Screen5
チケットぴあ ローソンチケット
『伝説の男』

【生誕70年記念〜ブルース・リーから未来へ】
伝説の男  ベトナム

10/24 19:00 シネマート六本木 スクリーン4
チケットぴあ ローソンチケット
第23回TIFFにどうぞご期待ください!
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